矢野経済研究所は、国内の健診・人間ドック市場を調査し、市場概況、将来展望を明らかにしました。
法定健診には、地方自治体が実施する住民健診や、企業・団体等が従業員向けに実施する定期健診、母子健康法・学校保健法などに基づく健康診断、40歳以上74歳以下の公的医療保険加入者全員が受診する特定健康診査(以下、特定健診)、がん検診、後期高齢者向けの高齢者健診などが含まれます。その他、利用者が任意で受診する人間ドック等の任意健診も実施されており、同調査における健診・人間ドック市場はそのいずれも対象として算出されています。
国による政策面では、これまで生活習慣病予防を柱とした予防医療が一貫して推進され、医療費適正化と健康寿命延伸の両立を目指す中で、受診促進と行動変容の実装が重視されてきました。特定健診制度は受診率を主要KPI(Key Performance Indicator)として運用され、2017年度以降、保険者別の実施率公表やインセンティブ(加算)・ディスインセンティブ(減算)措置によってガバナンスが強化されています。政策は「可視化→比較可能性→行動誘因」というメカニズムに基づいています。
また、2024年度からは第4期特定健診・特定保健指導が開始され、保険者別に新たな実施率目標値(例:協会けんぽ70%、単一健保90%)が設定されましたが、一方で実際の受診率は大きく乖離しています。地域・保険者間格差の是正や、DXによる受診導線(受診者の健診施設内での経路)設計、ナッジ理論(自発的な受診を後押しする取組み)活用、職域連携強化など受診行動につなげる持続的なデザインが引き続き課題です。(グラフ1)

グラフ1
健診施設では、受診者受け入れ拡大のため、他施設との差別化ポイントの1つとして受診者のニーズに対応した人間ドックのオプション検査を導入することで、受診者の獲得を図っています。同調査に関連し、2025年7~9月に健診実施施設に対して郵送アンケート調査を実施し、人間ドック標準検査以外のオプション検査として実施件数の多い検査項目(複数回答)について尋ねたところ、「PSA(前立腺特異抗原)検査」の回答が最も多く、次いで腫瘍マーカーである「CEA」、「CA19-9」と続いています。その他、上部消化管内視鏡検査、他の腫瘍マーカーや婦人科領域、脳神経領域の検査も比較的多い傾向がみられます。
新しいオプション検査項目としては、がんや脳梗塞・心筋梗塞、認知症などの発症リスクを評価するリスク評価系検査サービスが広がっています。近年では、AIを用いた解析サービスが注目され、心電図データや過去の健診結果を解析することで、将来の健康状態をシミュレーションする検査も登場しています。また、今後注力していきたい分野を尋ね多質問では、「人間ドック」という回答が多く挙げられ、引き続き人間ドックが注目される分野・市場であることが示唆される結果となっています。(グラフ2)

グラフ2

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル