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国内化粧品市場は回復傾向 外出機会増加やコロナ禍での生活様式定着化が要因

スキンケア

総合マーケティングビジネスの富士経済(東京都中央区、清口正夫社長) は、スキンケア、フレグランス、ヘアケア・ヘアメイク、メンズコスメティックス、メイクアップ(ベースメイク・ ポイントメイク)、ボディケアのカテゴリー別に国内の化粧品市場の調査結果を発表しました。

化粧品

2020年は2月から拡大し始めた新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言発出などで、インバウンド需要が消失したほか、百貨店や駅ビルなどの商業施設が休業を余儀なくされました。
また、消費者も外出自粛によりベース・ポイントメイクやクレンジング、サンスクリーンの使用機会が減少し、市場は前年比14.5%減の2兆7,502億円規模まで落ち込んでいます。

2021年は前年と比較して百貨店などの商業施設の営業状況が改善されているほか、ワクチン接種が開始されたことから外出機会が増加しており、前年比3.3%増の2兆8,415億円規模まで回復しています。

2022年以降は新型コロナウイルスの拡大懸念はあるものの、ワクチン接種や個々の感染対策など、コロナ禍での生活様式へのスタイルも定着化しつつあり、市場は徐々に回復に向かうと予想されます。

国内市場推移
2020年 2兆7,502億円 2019年比 85.5%(前年比14.5%減)
2021年推察 2兆8,415億円 2020年比 103.3%(2020年比3.3%増)

「おうち美容」への関心が高まり新たな顧客層を取り込んだ高価格帯市場

スキンケア
価格帯別で見てみると、高価格帯は近年スキンケア、メイクアップで若年層の需要を取り込むなど堅調に市場拡大してきましたが、2020年はインバウンド需要の消失や主要チャネルである百貨店、化粧品店の休業を受け、前年を大きく下回り、景況悪化により低・中価格帯へシフトする品目もみられた一方で、「おうち美容」への関心の高まりによって、スキンケアやヘアケアの予算を増やす消費者もみられ、新たな需要を取り込んだ傾向が見られました。

2021年はインバウンド需要の回復はなかったものの、ポイントメイクなど前年に大幅縮小したカテゴリーが反動で伸長したことで、市場は前年比3.3%増へと回復の兆しが見られました。

制度品系マスブランドのインバウンド需要消失で中価格帯市場は縮小も徐々に回復の兆し

コロナ
中価格帯は2020年、在宅時間の増加により通販で実績を伸ばすブランドが見られたほか、景況悪化による高価格帯からのシフトや、スキンケアでは在宅時間の増加により、スキンケアステップを見直す消費者が増え、スペシャルケアの需要が高まったものの、制度品系マスブランドのインバウンド需要の消失により市場は縮小していますが、2022年以降は徐々に市場は回復に向かうことが予想されます。

消費者のパーソナルユース志向の強まりで中・高価格帯へのシフトが見られた低価格帯市場

低価格帯は2020年、シートパックやサンスクリーンのインバウンド需要が消失したほか、消費者のパーソナルユース志向が強まり、ヘアケアなどで中・高価格帯へのシフトが進んだことによって市場は前年比13.1%減となりました。

一方、マスク着用やストレスなどにより、毛穴の開きやニキビなど肌の悩みが生じやすい環境になったことで、低価格帯の中でもより高単価なスキンケア商品などは好調だったようです。2022年以降の市場は微増で推移すると予想されます。

価格帯別の化粧品市場推移
2020年 2019年比 2021年推察 2020年比
市販用高価格帯 8,463億円 80,3% 8,914億円 105.3%
市販用中価格帯 1兆743億円 87.6% 1兆 1,026億円 102.6%
市販用低価格帯 6,410億円 86.9% 6,519億円 101.7%
業務用 1,887億円 95.7% 1,956億円 103.7%
市場合計 2兆7,502億円 85.5% 2兆8,415億円 103.3%

オプションステップとして注目されるスペシャルケア市場

スキンケアの中で、オプションステップとして使用されるスポットケア、美容液、パックを対象としたスペシャルケアは今後の注目市場と言えそうです。
近年、シワ改善効果・効能のある医薬部外品による需要喚起やインバウンド需要の取り込みにより市場が拡大されてきました。
2020年はインバウンド需要の消失や百貨店、化粧品店の休業によりカウンセリングの機会が減少したことから、実績を落とすブランドが多くみられ、市場は前年比2桁減となりましたが、一方では、
在宅時間の増加によってスキンケアに時間をかける消費者が増えたことから、ブースターや、マスク着用、ストレスなどによる毛穴の目立ちに対応した美容液ブランドが好調
だったようです。

美容パック

2021年はインバウンド需要の大きかったパックの需要回復は鈍かったものの、スポットケアや美容液は、オンラインカウンセリングの導入が進んだほか、2020年は不調であった美白訴求の商品も外出機会の増加に伴い需要が回復することが予測され、2022年以降の市場は拡大傾向に推移することが予想されます。

注目したいスペシャルケア市場の推移
2020年 2019年比 2021年推察 2020年比
3,370億円 82.9% 3,519億円 104.4%
執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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