矢野経済研究所は、国内の健康・機能性食品素材(原料)市場を調査し、各素材別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにしました。その結果、コロナ禍によって新たに浮上した健康問題解決のための素材の需要喚起と、一般食品への採用増が市場規模を押し上げ、2021年度の健康・機能性食品素材(44素材)の市場規模は、前年度比103.1%と好調に推移しました。
2021年度の健康・機能性食品素材(調査対象44素材[原料]の合計)国内市場規模は、流通金額ベースで前年度比3.1%増の1894億7700万円となっています。また、44素材の2021年度流通量合計は61725.5トン(前年度比3.7%増)で、金額、流通量ともに伸長しました。
健康・機能性食品素材の主力用途であった健康食品市場の伸長率が鈍化したものの、一般食品において健康を付加価値とした製品の開発・展開が活発化しており、2021年度に引き続き、2022年度も健康・機能性食品素材の需要・流通量の拡大につながると見込んでいます。同素材の中でも、新生活様式下におけるストレスや睡眠、肥満などの健康問題を解決する素材や、コロナ禍で重要性が再認識された「免疫」機能対応素材(「乳酸菌」、「プロポリス」など)が好調に推移しました。特に2020年に免疫対策の機能性表示食品が消費者庁に受理されて以降、「免疫」機能対応素材を配合した機能性表示食品が拡大し続けています。
肝臓機能対策系素材は2022年度以降回復基調
外出先での飲酒機会の減少から、アルコール対策として認知度の高い「ウコン」や「肝臓加水分解物」、肝臓機能回復用途での「プラセンタ」は流通量が減少しましたが、2022年度以降は外出自粛の緩和によりコロナ禍前の水準に戻っており、healthyfood今後は外出先での飲酒需要の回復と共に、肝臓機能対策での市場拡大が期待されます。
また、特に今後成長が期待される分野として、healthyfoodフェムケア素材の需要が高まっています。その背景には、女性の社会進出が進む中で、更年期をはじめとする女性の健康やライフスタイルの悩みに応える動きがあります。「エクオール」や「大豆イソフラボン」、「ヘム鉄」などの素材も今後販売量が増えるとみられています。
国内の健康食品市場は今後も緩やかな成長基調を辿り、一般食品市場は健康機能を有する商品の開発・展開が継続すると予測。機能性表示食品においては、差別化策として、1商品で複数の健康・機能性食品素材を複合・表示することで、期待される健康機能を高める動きが活発化しています。今後も健康・機能性食品素材市場全体としては緩やかな拡大基調を維持すると考えられます。
さらに、健康・機能性食品素材市場においては、国内の需要に加え、中国や東南アジアなど、将来的に需要拡大や市場成長が見込まれるエリアへの対策が今後の更なる成長の鍵であり、営業体制の構築・拡充などが期待されます。
一方で、世界的な需給バランスや、生産国での政治的なリスク、自然由来品に対する天候や自然災害のリスクがあるため、安定的な原料の確保が成長の成否を左右する素材も散見されます。そのため産地の分散化などを課題とする素材・企業も多く、長期的視点に立った戦略構築が必要です。
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル