業界ニュース

創業42年を迎えた老舗「イノス・ジャポン」に見る人材確保術


『女性の、女性による、女性のためのサロン』を目指した人事理念でエステティック業界を牽引

井野洋子社長

政府が提唱する「健康寿命の延伸」。日本の平均年齢が男女共に80歳を超え100歳時代も現実性を帯びてきた昨今、今後はいかに元気で介護も必要としない健康年齢を引き上げていくかが課題となります。

また「働き方改革」が推奨される中、これからの時代は、自立性が要求される時代とも言えます。つまり、健康を維持しつつ、長く働く必要性が唱えられているのです。

しかし、一方では、働き手を模索する企業も多く、人材不足が深刻化しています。大手コンビニチェーンでも一部で時短化を余儀なくされ、人手不足で営業を断念する所も見受けられます。健康美容業界も例外ではなく、エステティック業界に限って言えばエステティシャンの人材が少なく頭を抱えているオーナーも少なくない様です。

そのエステティック業界の老舗、イノス・ジャポン(本社東京都渋谷区、井野洋子社長)は業界に先駆けた各種制度を確立し、人材確保とその維持に成功しています。その同社の人材確保の取り組みについて紹介します。

今年8月、同社は創業42年を迎えました。日本国内には創業100年を超える企業が3万社以上もあり、その数字から見れば少ないと思う読者も多いかもしれません。

しかし同社が運営するエステティックサロン「キャロリーヌ」が創業した1970年代はエステティックサロンがほとんどなかった時代です。80年代に入り、徐々に増えていき、最近では身近な存在となりましたが、エステティックサロンの経営は難しく、開業後1年以内に閉店してしまうサロンが60%程度あり、3年以内で90%、10年以内で95%あると言われています。さらに10年以上存続しているのは5%程度、30年以上も存続しているのは0.02%程度と言われています。

他店が閉店していく要因は様々ですが、人材不足は否定できません。例えば、優美なイメージと反してハードな労働や厳しいノルマに耐えられず離職するケースや妊娠・出産・育児といったライフスタイルの変化によって離職せざるおえないケースなど結果としてエステティシャン不足で閉店に追い込まれたり、店舗縮小を余儀無くされたりする事も少なくありません。

公平性・透明性の高い人事制度がスタッフのモチベーションを高め低離職率・高定着率を継続する

エステサロンの内装

そういった背景の中で、同社が42年という老舗中の老舗として長く継続して経営できたのも、同社が創業当時から人材定着の重要性にいち早く気付き、男女雇用機会均等法が施行される1986年以前から職場環境と人事制度の整備に取り組んできたからと言えます。

「確かな技術を持っていれば女性が60歳になっても70歳になっても働けます。それがエステティック業界の本来の姿だと考えています。経営者として働きたいと願うスタッフを守って行くのは当然のことです」と同社の井野洋子社長は語ってくれました。その裏付けとして様々な施策を行っています。

「サロンの成長はスタッフの成長なくしては果たせない」という信念の下、スタッフ教育に重きを置き独自の研修システムを構築し、接客や技術のスキル級テストの実施、各種勉強会、海外研修など学びの場を提供する環境を整えました。さらに人事面では1990年、当時ではまだ珍しかった産休・育児・時短の正社員制度を導入し、『女性の、女性による、女性のためのサロン』を掲げて実践してきました。その証拠に同社には勤続20年以上のベテランエステティシャンが多数在籍しており、業界では類を見ません。

このことが42年という老舗として君臨してきた基盤と言えるのです。

では何故、離職率が低く、定着率が高いのか?

それは公平性・透明性の高い人事制度によるものです。まず取り上げるのが「昇降格基準」の明確化。年に1〜2回、皮膚理論や解剖生理学などの筆記試験とスキル級テストを行い、最上級を1級とし、新人は入社2ヶ月後に8級にチャレンジします。
部長やマネージャー、チーフなどの役職ごとに、対応するスキル級に満たない場合や始末書・顛末書を含む役職にふさわしくない言動があった場合は降格されますが、一方でスキル級を満たし、行動評価なども達成できていれば昇格もされます。

つまり、頑張った人が正しく評価されるシンプルなシステムを明確化しているため反感を招くことも一切無いということです。

その他には、産休・育休などの支援をするシステムを明文化した「ママキャロハンドブック」、全スタッフから取ったアンケートを明文化した「キャロリーヌグループ スタッフアンケートまとめ」、お客様からのアンケートを全て明文化した愛のメッセージハンドブック「お客様満足度アンケート集計結果」、来年定年退職(60歳)を迎えるスタッフのために制作した「再雇用制度ハンドブック」を全スタッフに渡して意思の統一を図っています。

また今年7月にお客様の情報を遵守し信頼してもらうサロン造りを目指すために「情報セキュリティハンドブック」が新たに制作されました。

このように様々な施策で離職率の低下、定着率のアップを図る成功事例はエステティック業界だけに留まらず、日本の企業においても実践してみる価値は十分にあるといえます。

井野洋子社長

創業42年を迎えてさらにパワーアップを図ると語る井野洋子社長。

 

現場のスタッフの実際の生の声が集約されている「キャロリーヌグループ スタッフアンケートまとめ」

アンケート資料

お客様の生の声が良い事も悪い事も集約されている愛のメッセージ「お客様満足度アンケート集計結果」

アンケート資料

「ママキャロハンドブック」は産休・育休などを支援する虎の巻的存在。

ママキャロハンドブック

政府の政策として提唱されている健康寿命の延伸や働き方改革を推進する「再雇用制度ハンドブック」。来年定年退職するスタッフのために制作されました。

再雇用制度ハンドブック

同社の基盤となる「人事の仕組みハンドブック」

人事の仕組みハンドブック

2019年7月に社員に配布された「情報セキュリティハンドブック」

情報セキュリティハンドブック

会社概要

株式会社イノス・ジャポン

設立:1977年8月

主な事業内容:エステティックサロン8店舗(2019年8月時点)の運営およびオリジナル化粧品の販売

【新宿本店】
住所:東京都渋谷区代々木2-2-13 新宿TRビル3F
TEL:03-5388-7966


Related articles