矢野経済研究所は、国内のニュートリション市場を調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにしました。
少子高齢化と被介護高齢者の増加、労働者のストレス増大と食生活の偏り、生活習慣病の若年化など、現代日本において、健康の維持増進や健康寿命の延伸は国、自治体、企業、個人のいずれにおいても大きな課題となっています。しかし、食を中心とした生活習慣の改善が進んでいるとは言い難い現状です。こうした背景のもと、0歳から100歳に至る全世代を対象としたニュートリション(栄養)の重要性が改めて見直されています。
調査では健康の維持増進や健康寿命の延伸を目指すための製品として、育児用ミルク・ベビーフード、完全栄養食、パーソナライズフード、経口補水液、病者食(調理品・加工食品)、在宅配食サービス、高齢者向け栄養補給食品(低栄養予防食)、介護食(嚥下食・咀嚼困難者食)、流動食の9市場を対象としています。9市場から構成される2023年度のニュートリション国内市場規模を前年度比104.3%の1兆1,297億円と推計しています。
内訳は、病院における調理品(給食)が主力の病者食市場が大きなシェアを占めているものの、在宅高齢者の増加を背景として、在宅配食サービス市場や補食(おやつ・デザート)としての利用機会が多い高齢者向け栄養補給食品(低栄養予防食)市場が拡大しています。また、人々のライフスタイルが多様化するなかで、完全栄養食やパーソナライズフードなどの新興市場も成長している様相です。
パーソナライズフード市場は2010年代後半に立ち上がった新しい市場で、現状はスタートアップ企業が中心で、ベビーフード(離乳食、幼児食)や嗜好品(コーヒー、菓子等)、健康維持・増進を目的とした食事などを、主としてサブスクリプション形式(定期購入型)で提供しています。
ニュートリション市場では、国が在宅医療・在宅介護を推進しており、食事についても自宅で安心して必要な栄養素をまかなうことが出来るように、在宅配食サービスや栄養補給食品(低栄養予防食)などの需要が拡大する見込みです。
一方で、若年層や働く世代はライフスタイルが多様化し、個々の健康課題に合わせて手軽にセルフケアできる製品やサービスを志向しており、完全栄養食市場やパーソナライズフード市場が引き続き成長する見通しです。
このようなことから、ニュートリション国内市場規模(9市場計)は、2025年度には1兆1,924億円に成長し、2030年度には1兆3,357億円まで拡大すると予測されます。

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル