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温泉で気軽に未病予防 温泉はなぜ体に良いのか?


日本人にとって温泉は特別な存在です。古くから温泉には病を癒す力があると考えられ、日本人の心の拠り所にもなってきました。現代においても、西洋医学で病気が治らない場合に、温泉を活用した湯治に救いを求める方がいらっしゃいます。このように、何となく健康に良いと信じられてきた温泉の効能・効果は、戦後日本温泉気候物理医学会の主導により、科学的な検証が進められてきました。

さらには近年、温泉の持つ心理的な効果についても、様々な心理指標を用いた調査が行われ、温泉療法にはリラクゼーション効果があることはもちろん、抑うつ傾向を改善する効果があることなどが実証されています。

日本でスパというと温泉やプールの整ったリラクゼーション型の施設を指しますが、世界的には自然・伝統療法を用いて心と体を癒す施術やサービスと定義されています。
現代のスパ施設は、健康志向を高め、ウエルネススパやメディカルスパとして発展しており、日本全国各地で療養を目的とした温浴施設が存在しています。
最近ではクリニックとスパ施設が連携し、病気の方には医療・療養サービスを、健康な方には未病に備えたサービスを提供する施設も増えてきています。

健康増進に温泉を上手に活用

温泉の医学的作用には、物理作用、化学作用、生体調整作用があげられます。

物理作用

お湯につかると、お湯の温度や浮力などから体に良い影響を受けます。温泉で体を温めることで血流が良くなり、痛みが軽減されたり代謝が高まったりという効果が期待できます。
また、水中では体重が約9分の1になることから関節への負荷が軽減され、動きが滑らかに。

化学作用

温泉にはミネラルなどの化学物質が含まれています。これらの物質がお湯に溶けて、皮膚や口から吸収されて身体に影響を及ぼすと考えられています。
例えば、塩化物強塩泉でしたら高濃度のミネラル成分は、皮膚表面を膜のように覆うことで、物理作用として非常に優れた保温・保湿効果を発揮します。このためナトリウム塩化物強塩泉は別名「熱の湯」と呼ばれ、一般的に免疫力を高める効果があることに加えて、関節リウマチや変形性関節症など、筋骨格系の痛みに対して効果が高いことが知られています。
また、鉄分が多く含まれる含鉄泉は鉄欠乏性貧血に効果があるとされています。

生体調整作用

温泉に入るとよく眠れる、リラックスできるのを実感する人は多いでしょう。これは最近は「総合的生体調整作用」と呼ばれ、温泉地や温泉による軽微な刺激が体内のホルモンや自律神経に働きかけ、乱れた生体機能を本来のリズムに整える作用といわれています。
例えば血圧やホルモン値が高い人は低くなり、低い人は高くなるというように、自然治癒力で体の機能を正常に導く作用があることが明らかになってきました。
どのような泉質であっても温泉内の成分が肌に付くことで身体が冷めにくくなるので、冷え性に良いのが温泉。さら、免疫機能であるリンパ球やNK活性が高まり、免疫機能がアップするという研究データもあります。

温泉の上手な入り方


入浴は意外に胃腸に負荷が掛かります。そこで空腹時・食後30分は入るのを避けましょう。また飲酒後の入浴も避けるべきです。飲酒で脱水や血圧の変動がトリガーとなって脳卒中や心筋梗塞のリスクが跳ね上がります。
健康な人でも脱水を防ぐために、必ずコップ1杯の水を摂るよう心がけてください。
温泉に浸かる際は必ずかけ湯を。特に寒い季節、いきなり湯船だとヒートショックの原因となります。寒い脱衣所から温かい風呂に入ることで血圧が大きく変動し、急に意識を失ってしまうのです。

ヒートショックを予防するために、かけ湯をして身体を温度に慣らしてからお湯につかることを習慣にしてください。家庭のお風呂でしたら脱衣所と浴室はあらかじめ暖めておくなどの対策を取りましょう。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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