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口から全身を整える——「歯科鍼灸」を掲げる関根陽平院長に聞く

関根陽平

歯科医・鍼灸師・アスレティックトレーナー——
三つの視点を併せ持つ関根陽平院長は、咬合や歯列といった“形”だけでなく、呼吸・嚥下・発声・姿勢といった“機能”まで一体で診る「歯科鍼灸」を実践している。
キーワードは「口から全身を整える」。
日常のクセを整え、未病段階からパフォーマンスまでを見据える統合アプローチだ。

みはる矯正・歯科医院
関根 陽平 院長

歯科医師・鍼灸師・医学博士・歯学博士

関根陽平

[略歴]
・みはる矯正・歯科医院 院長
・鍼灸治療院 勝笑堂 院長
・スポーツ歯学研究所 VictorySmile 所長
・みはる矯正・歯科医院AC(アスリートク ラブ)代表兼ヘッドコーチ
・東京歯科鍼灸統合勉強会(TIADS)主宰
・パリオリンピック男子円盤投げ日本代表候 補安藤夢 ヘッドコーチ
・東京羽田ヴィッキーズチームデンティスト
・横浜エクセレンス クラブデンティスト
・公益社団法人 東京大田区大森歯科医師会 専務理事
・東京医療保険大学 客員教授

学び直しの原点——“口”が抜け落ちた現代医療

歯科

スポーツ現場で無数の選手を診てきた関根院長は、整形外科的な知を積み上げるほどに「口の機能」が医療の議論から外れがちな現実に違和感を抱いたという。 そこで東洋医学(鍼灸)と歯科医学を架橋し、全身の運動と生体反応の“出発点”として口腔を再定義。 臨床と研究を往復しながら、矯正・咬合・顎機能の改善と全身の協調を同時に最適化する道を拓いてきた。

歯科鍼灸とは——形と機能の両輪で診る

歯科の強みである精緻な形態回復に、鍼灸の自律神経・筋緊張・血流調整を組み合わせるのが関根流。評価と指導の土台は「口腔の基本姿勢」だ。

1 口は軽く閉じる
2 鼻で呼吸する
3 舌は上顎へ
4 歯は“噛みすぎない”

この四点が整うと、咀嚼・嚥下・呼吸・発声の運動連鎖がスムーズになり、頭痛・肩首のこわばり、体幹の歪み、睡眠時の口呼吸傾向など、全身の不調の“因果の糸”がほどけやすくなる。咬合を調整すれば身体は必ず反応する——その変化を先回りして鍼灸で“通り道”を整えるのが、歯科鍼灸の要諦だ。

関根陽平

関根陽平

未病のうちに介入する——日常を変える処方箋

関根院長が重視するのは「今日からできるセルフメディケーションツール」。

● 日中は上下歯を接触させ続けない(TCH対策)

● 舌先を上顎の“スポット”に置く習慣化

● 就寝前の鼻呼吸リハーサル(口唇閉鎖・軽い鼻呼吸練習)

● 頸部〜肩の過緊張を解くセルフケア

これらの“行動処方”が、歯科治療の効果を底上げし、再発を抑え、日常のパフォーマンスを静かに押し上げる。

医療は統合へ——地域で選べる連携モデル

理想は、歯科と鍼灸が競合するのではなく、症状や目標に応じて相互紹介・共同対応できる地域連携だという。歯科で扱うべき構造的課題と、鍼灸的に整えるべき機能的課題を仕分け、患者が“最短距離”で改善に進めるルートを増やす。臨床の現場で磨かれたこの連携は、スポーツ領域のパフォーマンス向上にも応用が広がっている。

関根先生考案の舌を正しい位置に戻す「かんじゃダあメ」

かんじゃダあメ

噛みしめグセや口呼吸の背景には、「舌が上顎に収まらず、下方・後方に落ちている」問題がある。そこで院長が考案したのが、舌位(舌の位置)を“思い出させる”ためのトレーニング用ノンシュガーキャンディ「商品名:かんじゃダあメ」。
発売時期:12月〜1月(予定)
飴を上顎と舌で“挟む”だけで、

● 舌を上顎へ誘導し、噛みしめの暴走をブレーキ
● 口唇閉鎖と鼻呼吸の習慣化を後押し
● 過剰な咀嚼筋緊張のリセットに寄与

という“ながら介入”が可能になる。医療行為ではなくセルフメディケーションツールとして、日常に無理なく組み込めるのが強み。矯正中の方や日中TCHが気になる方、就寝時の口呼吸傾向がある方に、とくに有用だ。

まずは“今日から”できること

1日数回、姿勢を正し「口を閉じる・鼻で吸う・舌を上顎へ」を30秒。上下歯を離す意識を添えるだけで、首肩の力みが抜け、頬や口周りの動きも軽くなるはずだ。違和感や痛みが続く、歯ぎしり・食いしばりが強い、睡眠中のからだの回復感が乏しい——そんな人は、専門家の評価を受けてほしい。形と機能を同時に整える歯科鍼灸は、“今日からの体調”と“数年後の健康”の両方に効く投資である。
関根院長の提案は、歯科と鍼灸を一本の線で結び直し、口腔を「栄養」「呼吸」「発声」「姿勢」へひらく“全身のハブ”として捉え直すものだ。診療室の外側まで届くセルフケア設計と、11月発売予定の「かんじゃダあメ」による舌位トレーニング——行動を変える小さな仕掛けが、統合医療の実効性を高めていく。今後の展開にも注目したい。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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