侍マッサージが世界のトップに!
2025年5月20日から22日、東京・代々木第二体育館にて「マッサージ選手権ワールドツアー(MCWT 2025)」が開催されました。この大会は世界中のセラピストが集結し、“癒しの技術”を競い合う、マッサージ業界におけるオリンピックとも言えるイベント。日本大会・アジア大会に続く今年の世界大会は、30ヵ国以上から百数十名のプロフェッショナルが集まり、かつてない熱気に包まれました。
技術だけでなく、創造性や“美しさ”も問われる国際舞台
大会では、オイルマッサージ、タイ古式マッサージ、フリースタイル、ボディケア、フェイスマッサージ、ストレッチ部門の全6部門で競技が行われ、各部門の優勝者が選出されたのち、最終日にその6名が再び競い合い、総合優勝者が決定されます。
審査基準は非常に多角的で、技術力はもちろんのこと、施術の流れや創造性、クライアントとのコミュニケーション、さらには施術者の姿勢や所作の美しさまでが評価対象となります。
この大会が持つ最大の意義は、セラピスト一人ひとりが自らの技術と向き合い、磨き上げるきっかけとなること。そして世界中の施術者と交流しながら、互いの技術や知見を高め合う場として、業界全体のレベルアップと発展に貢献している点にあります。
本大会の運営者である川上拓人氏は2019年にフランス・パリで開催された「MEILLEUR SPA PRATICIEN INTERNATIONAL FRANCE 2019」のインターナショナル部門で優勝し、世界一のセラピストとしての地位を手に入れています。
会場を包んだ熱気─“魅せるマッサージ”という新しい文化
代々木第二体育館には、施術ベッドがずらりと並び、観客は間近で施術を観賞。リズム、圧の深さ、手技の多様性、そしてクライアントへの寄り添い。
そのすべてが審査対象で、まさに「魅せるマッサージ」。施術は手技というより“パフォーマンスアート”と呼びたいほど洗練されたものでした。
「施術の音が聞こえないほど静まり返り、観客が息をのむ。マッサージは見せるものでもある、という新しい視点を感じた」とは、ある参加国の審査員の言葉。
素晴らしいパフォーマンスを見せた施術者には観客ら割れんばかりの拍手と称賛が贈られました。
グランドチャンピオンTARO YAMAGUCHI氏が見せた“侍の手技”
2025年、頂点に立ったのは、日本代表のTARO YAMAGUCHI氏。理容師としてのキャリアを持ち、横須賀米軍基地内での施術経験を経て、現在は家業である「山口理容店」の4代目としても活動。彼が披露したのは、日本の伝統的な“ていねいさ”と、現代的ボディワークを融合させた独自技術、通称「侍マッサージ」。
特にフリースタイル部門での彼のパフォーマンスは圧巻でした。呼吸と手技が完璧に同調し、リズムと静寂が交差する。全身を包み込むような動作は、まるで「書の達人が空気に筆を走らせている」ようだったと、国際審査団も絶賛。
TARO YAMAGUCHI氏は「マッサージは“気を贈る”こと。日本人の手のやさしさ、誠実さを世界に伝えたかった」と語っています。
氏の優勝は、日本の手技文化の真価が、世界レベルでも十分に通用することを証明した瞬間でした。
大会を創った男、川上拓人氏の世界戦略
大会全体をプロデュースしたのは、川上拓人氏。自身も2019年にフランスで世界一のセラピストに輝いた実績を持つ川上氏は、「日本のセラピストの技術を、もっと世界に伝えたい」という信念のもと、国際大会の設計から人材育成、出場者の支援までを一手に担ってきました。
彼の構想は単なる競技会ではなく「文化的交流と経済活性の場」としての大会。世界各地で年間ツアー開催、地域密着と世界連携の両立マッサージ=“医療の手前”の予防医療と認識させる啓蒙活動。
また、川上氏が代表を務める株式会社Proriumでは、セラピスト向けのオンラインアカデミー「TOA」も展開。日本発の技術を、世界標準の教育コンテンツとして再構成し、グローバルに展開しています。
世界中の人々をつなぐ“共通言語”
かつてマッサージは、「癒し」を提供する裏方的な存在とされてきました。しかし今、大会を通じてその価値は“アート”の領域へと進化しつつあります。
マッサージは、もはや単なる技術ではなく、施術者の想いを伝える表現手段であり、世界中の人々をつなぐ“共通言語”として文化の架け橋になり始めています。
その象徴とも言えるのが、今回のMCWT 2025。
TARO YAMAGUCHIの圧倒的な優勝、そして川上拓人氏が描いた大胆なビジョン、さらに世界各国から集まったセラピストたちの情熱。
すべてが交差し、響き合ったこの大会は、マッサージの未来に新たな1ページを刻んだに違いありません。
大会を終えて・・・株式会社Prorium 川上拓人
この大会を通じて多くの人が出会い、繋がり、成長していく姿を見て、「やってよかった」と心から思えました。
運営の中では、採点ミスなど多くの課題もありました。決して簡単な道のりではなかったけれど、それでも多くの方が支えてくれたおかげで、ここまで来ることができました。
この経験を通して、私自身も人として大きく成長させていただいたと実感しています。
この世界大会は、私の夢でもあり、同時に新たなスタート地点でもあります。
これからも世界中を巻き込みながら、「癒し」の力で業界を、そして世界をより良くしていくために、挑戦を続けていきます。
みんなで世界を癒しましょう。

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル