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アフターコロナを見据えた動き活発化へ。インバウンド需要再来のキーマンは在留中国人

マスクの女性

国内の在留外国人は280万人。日本情報の発信起点として強い影響力を持つ80万人の在留中国人

新型コロナウイルスの影響でインバウンド市場は完全に冷え切ってしまっています。
そんな中、アフターコロナを見据え、国内の在留外国人へ向けた施策を打ち出す企業体も見られます。
法務省の在留外国人統計によりますと、2019年6月時点での統計データですが、
在留外国人総数は2,829,416人で、特に中国人は786,241人と全体の28%を占めています。次いで、韓国人の451,543人、ベトナム人371,755人と続いています。

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インバウンドに比べて物足りなさを感じるかもしれませんが、インバウンドは、業態や商品形態、サービス内容にもよりますが、ある意味、その場限り的なビジネスモデルとも言えます。

一方、在留外国人はリピーターとしてなりうる属性と言え、中でも在留外国人の約30%を占める中国人は、人間関係の特徴として「圏子」という存在を無視することはできません。

「最も近い人間関係である親族や友人の次に信用の高い位置づけの人間関係で、好きなものや趣味趣向、特定の目的のためにつながっている交友関係のことを圏子と呼んでいます。

この圏子から得た情報は信頼できる質の高い情報として伝播し、新たな商圏として期待されています。
今はまだコロナ禍なので直接交流はできませんが、日本国内から中国への配送体制も少しずつ回復の兆しが出てきたこともあり、越境ECも昨年よりも回復傾向です。
アフターコロナを見据えた動きも出てきていますので、在留中国人を中心に在留外国人からの伝搬による市場にも注目しています。(中国事情に詳しいJC Peace小澤博孝代表)と語ってくれました。

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中国への日本情報発信として重要な起点となる在留中国人市場。来るべきインバウンド需要の再来に向けた施策のキーマンは「在留中国人」

これまではインバウンドに偏りすぎていた傾向がありましたが、日本国内において東京を中心に日本全国に80万人近い在留中国人が生活しており、日本帰化者や残留孤児を合わせると100万人に届きそうな巨大市場であることも再認識したいところです。

都道府県別に在留中国人の数を見てみますと、東京都が226,319人で全体の28.78%を占め、埼玉県73,288人、神奈川県72,896人、大阪府65,394人、千葉県54,486人と続いています。
東京圏(東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県)だけで日本在留中国人の総数の54%を占める426,989人が生活しているのです。

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在留中国人の属性を見てみますと女性の割合が多く、20〜30歳代が中心で、高度外国人材や経営・管理も他国に比べて圧倒的に多いです。

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在留資格では、永住権取得者を除くと、留学・技術・人文識・国際業務・家族滞在が特に多いのがわかります。

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これまでは来日外国人ばかりに目線が行っていた面がありましたが、このように在留外国人に対して目を向けてみますと、まだまだ国内需要増加の可能性があります。
特に在留中国人に対して、商品認知の向上やサービスを満足してもらうことで、国内需要を高めていく施策も視野に入れたいところです。

中国人の必須コミュニケーションツール「WeChat」

在留中国人に対しての販売ツールとして効果的な手法として活用されているのがWeChat(ウィーチャット)アプリ。WeChatはWeiboなどと並ぶ中国最大人気SNSの1つ。
ユーザー数は中国国内約7億、世界で12億以上、月間アクティブユーザーは10億以上と、世界でも最大規模の人気アプリで、中国人の日常メッセージはほとんどWeChatで行われており、スマートフォン・PCともに利用可能です。

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日本国内ではコミュニケーションツールとして今ではすっかり定着したラインですが、中国国内では規制などの問題もあるためラインやフェイスブック、インスタグラム、YouTubeなどのツールがあまり浸透されておらず、ほとんどのコミュニケーションツールとしてWeChatを利用しているという背景がありますが、意外にも日本ではあまり浸透されていない感じが見られます。

中国人のWeChatの利用方法は、携帯のボイスメッセージ機能(音声メッセージ)を良く使い、携帯(スマートフォン)の声を認識する箇所に口を近づけて話す姿は良く見かけられます。
LINEと似たスタンプに加え、GIF画像や絵文字も良く使うようです。また名刺交換と一緒にWeChat IDを交換するなど、ビジネスの場面でも良く使われています。

個人WeChatのQRコードを名刺に掲載している人も多いです。また、決済機能サービスが進んでいる事から、コンビニ、タクシー、公共料金、映画チケットなど様々な場面で利用されており、LINEより生活インフラとして進んでいる様子がうかがえます。

新型コロナウイルスが騒がれる以前のインバウンド全盛期においては、WeChatが情報ツールとして重要な役割を担っており、現在もその傾向は変わっていないようです。

信用性の高い情報起点としてインバウンドを支える在留中国人

「インバウンド需要は在留中国人からの情報発信により、その情報を信用して日本での購買意欲に結びついていることも大きいと思います。例えば、私たちが国内外問わず、初めて訪れる場所の情報は、国内ならばその地元の方の情報に信用性を感じ、海外ならば、現地の方の生の情報に信用性を感じます。中国の方も同じで、実際に日本で生活している人の生の情報に信用性を感じます。その情報伝達のツールとしてWeChatを利用するケースが多いです」(前述のJC Peace小澤博孝代表)と語っています。

実際にWeChatには自社商品のPR、ネット販売促進、店舗施設、クーポン配信、イベント告知、ツアー商品販売、チケット予約、学校や塾、税理士紹介、不動産、求人、物流など多岐にわたって配信されています。
これらは在留中国人の情報収集だけでなく、中国国内への越境ECによる流通、また訪日の際の情報収集などに活用されているケースが多いです。

例えば「東京工作版」というサイトでは在留中国人に向けた様々な情報が配信されています。
この情報が前述した圏子などへ伝達され、国内から現地への商品供給を可能にしています。
また、代理店募集の配信も可能で、中国への商品販売の強化の一環で、国内に代理店を作り、中国への供給拠点として展開させていく施策としても検討できるのではないでしょうか。

WeChat

海外に日本人街があるように、日本の様々な場所にも中国人のコミュニティーが存在しています。
日本で生活する在留中国人たちは、中国現地の消費者に日本を伝えるキーマンとなりえます。在留中国人たちにファンになってもらうことは、対中国マーケティングにおいて重要です。

このようにコロナ禍において、インバウンド需要が見込めないながらも、在留中国人に対して目を向けてみますと、インバウンドに比べて破壊力はないものの、インバウンドを支える礎になっている要因として、ビジネスモデルの一つとして再考しても良いのではないでしょうか。

今回はWeChatというツールで事例をあげましたが、いずれ再来するであろうインバウンド需要へ向けての「今できる施策」として在留外国人、特に『在留中国人』を視野に入れた戦略も検討してみたいところです。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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