ダイエットを超えたブルーオーシャン市場への戦略提言
近年の美容健康分野では、「良質な睡眠が美肌・アンチエイジング・代謝改善のベース」という科学的理解が進み、単なる「眠る=休息」から、「眠る=美しくなる」への概念転換が起きています。たとえば美容雑誌や情報番組などでも「睡眠」が特集される頻度が増え、「ナイトルーティン」や「睡眠美容」というキーワードもトレンド化しています。こうした背景の中、2025年のBWJではインナービューティのトップブランドを率いる佐々木弘行氏がセミナーに登壇し急成長が期待される睡眠美容をテーマに講演を行いました。

佐々木弘行氏
美容の常識が変わりつつある
従来の「痩せる・小顔になる・肌を整える」という“外見重視”の美容に代わり、今、注目されているのが「睡眠を整えて内側から美しくなる=睡眠美容」。
とくに30代〜50代の女性は、加齢・ホルモンバランス・ストレス・睡眠の質など、肌や体調に“内的な不調”を抱えやすくなります。その結果、「睡眠を整えたい」「疲れを取りたい」「眠ってキレイになりたい」といった声が急増しています。
実際、一部ドラッグストアでは、美容系サプリメントの売上は睡眠がダイエットを上回ってきているという調査結果も。またGoogleトレンドや市場レポートでも「Sleep Beauty」関連ワードが急上昇しています。
この傾向は、今後ますます顕著になっていくと予測され、事実スリープテック市場は、2023年に95億円 → 2027年には160億円になるだろうと言われています。
海外では「スリープビューティー(Sleep Beauty)」がすでに一大トレンド。夜用マスク、スマート枕、脳波対応アイマスクなど多彩な商品が続々登場。日本だけでなく「睡眠=美の基盤である」という認識は世界中で広がり、製品市場・美容サービス市場ともに年々拡大しています。
睡眠美容が“ダイエット”を超えるニーズとなった背景
近年の意識調査では、「美容において最も優先したいこと」として、“質の良い睡眠”が“ダイエット”を上回る結果も見られるようになりました。その背景には、左記のような変化があります。
また、SNSや雑誌では「ナイトルーティン」「眠れるケア」が人気コンテンツとなり、消費者意識も“美しくなるためにまず眠る”という方向へと移行しています。
エステティックにおいて睡眠美容が大きな差別化に
2025年現在、エステティック業界は厳しい経営環境に直面しています。特に女性向け施術市場の縮小や脱毛サロンの相次ぐ経営破綻が影響し、業界全体の市場規模は5年連続で減少しています。
矢野経済研究所の調査によれば、2024年度の国内エステティックサロン市場規模は、前年度比98・3%の3043億円となり、5年連続のマイナス成長が続いています。
中でも市場全体の6割以上を占める女性向け施術市場(美顔、痩身・ボディ、脱毛など)は、前年度比97・4%の1918億円と縮小しています。特に脱毛市場では、リージョナルチェーンや中堅規模の企業の経営破綻が相次ぎ、突然のサロン閉鎖や返金トラブルが報道される事態が続いていることも影響していると思われます。
このような状況下で、エステティックサロンが生き残るには、新たなサービスや市場への対応が必要となり、そこで期待されるのが睡眠美容といえるでしょう。
今現在「科学的に睡眠の質を上げる」ことを主目的にしたエステサービスは、ほとんど存在していないのが現状です。
これは、顕在化したニーズに対し、まだ供給がほとんどない“空白地帯”であり、睡眠美容を導入することで明確な差別化が可能となるでしょう。
佐々木氏がセミナーで睡眠美容がエステサロンのブルーオーシャンである理由を以下のように述べています。
① ライバルが少なく差別化できる
多くのエステサロンが小顔・痩身・美白に集中する中、「睡眠を整えるエステ」はまだほとんど存在していません。つまり、競合の少ない未開拓市場=ブルーオーシャンです。
② ストレス社会で眠れる体験が高需要
現代人の5人に1人が不眠傾向という時代。サロンで“深く眠れる”体験は、「美しさ」だけでなく「救い」にもなります。
③ 高単価・高リピートが見込める
睡眠美容は“美と健康の土台”に働きかけるため、効果の実感と満足度が高く、単価設定を上げやすく、再来率も高いのが特徴です。
これからの時代、お客様が求めるのは「変われる美容」ではなく、「無理なく続けられる、心地よい美容」です。その中で、「睡眠」という体に欠かせない行動に美を掛け合わせる“睡眠美容エステ”は、圧倒的な信頼感と独自性をもたらします。

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル