脳は「水」で洗われている
スリープテックデバイスWOTTの特徴の一つが、体内水分の状態に着目した独自技術である。WOTTに搭載されているWOW(Water Optimization Wave)は、水分を極小化し、動きやすい状態へと最適化する特許技術であり、睡眠中の体内環境を整える中核的な役割を担っている。本イベントでは、このWOW技術が医療・脳科学の視点からどのように評価されるのかが、大きな注目点となった。議論は睡眠中に起こる〝脳の回復と排出の仕組み〟へと展開した。
私たちは「眠ることで疲れが取れる」と漠然と理解してきた。しかし近年の脳科学は、睡眠が単なる休息ではなく、脳内環境を根本から回復させるための“能動的なメンテナンス時間”であることを明らかにしつつある。睡眠中、脳では何が起きているのか。そして、その環境に水の状態から介入するWOTTは、脳科学の視点からどのような可能性を持つのか。睡眠と脳研究の第一線に立つ毛内拡助教の知見から、その核心に迫る。
睡眠中、脳は「休んでいる」のではなく「働いている」

毛内氏は、睡眠を「脳にとって最も重要なメンテナンス時間」と位置づける。
脳は覚醒中、情報処理や意思決定を繰り返す一方で、代謝産物や老廃物を常に生み出している。代表的なものが、アルツハイマー病との関連で知られるアミロイドβだ。これは高齢者だけでなく、若年層の脳でも日常的に産生されている。
では、こうした老廃物はどのように処理されているのか。
その鍵を握るのが、近年注目されているグリンパティック・システムである。
脳内の「排水機構」―グリンパティック・システム
グリンパティック・システムとは、脳脊髄液が脳内に浸潤し、神経細胞周囲の老廃物を洗い流す仕組みだ。
この排水機構は、特に深いノンレム睡眠中に最も活性化することが分かってきた。この水の流れを制御しているのが、グリア細胞の一種であるアストロサイトであり、水チャネルタンパク質・アクアポリン4を介して脳内の水分動態を調整している。
しかし加齢や疾患によってアクアポリン4の配置が乱れると、水の通り道が滞り、老廃物が排出されにくくなる。
結果として、炎症や脳機能低下のリスクが高まる。
睡眠中はノルアドレナリンが低下し、脳内の細胞間隙が広がることで、水の浸潤と循環が促進される。つまり睡眠とは、脳内の水流を最大化し、脳を「洗う」ための時間なのである。
脳科学から見たWOTTの可能性

ここで毛内氏は、重要な視点を提示する。
「水分は多ければ良いわけではありません。重要なのは、水がどれだけ動きやすい状態にあるかです」
水分子が大きなクラスター(塊)を形成していると、細胞間をスムーズに移動できず、循環や老廃物排出が阻害される。
この“水の状態”に着目した技術として位置づけられるのが、WOTTに搭載されたWOW(Water Optimization Wave)だ。
WOWは、水分を極小化し、より動きやすい状態へと最適化することを目的とした技術である。毛内氏は、この技術が脳内の水流に与える影響を検証するため、動物モデルを用いた基礎研究を行ってきた。
その結果、WOW環境下では脳脊髄液の脳内浸潤が高まり、老廃物を洗い流す効率が向上する可能性が示唆された。
また、炎症モデルにおいては、グリア細胞の炎症が抑制され、組織損傷の拡大が抑えられる傾向も確認されている。
現代人が感じる「寝ても取れない疲れ」や慢性的な脳疲労は、単なる疲労ではなく、脳内のメンテナンス機能が低下した状態とも捉えられる。
水分環境を整え、脳本来の回復機構を支えるWOTTは、その悪循環に静かに介入するテクノロジーと言える。
何もしない時間を科学で支えるという発想
毛内氏は、睡眠について次のように語る。起きている時間の生産性ばかりが重視されがちな現代において、実は、私たちが「何もしていない」と感じる時間に、脳は回復や整理といった重要な働きを行っている。
意識的な努力を必要とせず、ただ寝ているだけで、体内の水のコントロールするWOTT。
脳科学の視点から見ると、WOTTは、睡眠という時間を「ただ過ぎていくもの」から、「未来を育てるための土台」へと変えていく存在だ述べている。
毛内 拡氏(もうない ひろむ)

[プロフィール]
主な著書に、『脳を司る「脳」』(2020年)、『「気の持ちよう」の脳科学』(2022年)、『「頭がいい」とはどういうことか−脳科学から考える』(2024年)など。脳科学の達人2023[4][5]。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ」フジテレビ「ほんまでっか!?TV」等メディアにも多数出演。北海道函館市出身。
[略歴]
北海道函館市生まれ。2013年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 知能システム科学専攻 博士課程 修了。2010年〜2013年 日本学術振興会 特別研究員 (DC1)。2013年〜2018年 理化学研究所 脳科学総合研究センター 研究員。2018年〜現在 お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教。東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 知能システム科学専攻 修了/博士(理学)

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル
