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飼い主のペットへの健康意識の高まりがペットビジネスの好調を支える


矢野経済研究所は、国内のペットビジネス市場を調査し、セグメント別の動向、参入企業別動向、将来展望を明らかにしました。

2023年度のペット関連総市場規模は、小売金額(末端金額)ベースで、前年度比104.5%の1兆8,629億円を見込んでいます。2022年度から2023年度にかけて、原材料・資材・物流関連費・人件費などの高騰により、企業内での製造・物流面の可能な限りの業務効率化やコスト削減だけでは利益や品質確保が困難となり、値上げを余儀なくされています。その結果、ペット関連総市場の根幹であるペットの飼育頭数が伸び悩む中においても、参入各社による高付加価値品の提案や、飼育頭数が微増で推移する猫向け商品の投入によって売上高は増加傾向となっています。
また、犬や猫の生体価格はコロナ禍前に比べ高騰していると見られ、価格帯の手頃な小動物や魚に生体販売の需要がシフトしてきているため、今後も引き続き小動物や魚の需要が見込めると様子がみられます。

飼い主のペットへの健康意識の高まりで犬猫共にプレミアムフード市場が拡大

物価高騰の影響により、2022年度から2023年度にかけてペットフード、ペット用品を中心に、各社値上げを余儀なくされたものの、飼育頭数減少による販売数量の落ち込みを金額でカバーする形で市場が伸長しています。

ペットフードでは、飼い主によるペットへの健康意識の高まりが市場伸長の要因になっているようです。
ドッグフード市場では、高価格帯商品であるプレミアムフードの需要が拡大しています。特に、円安で価格面・安全面で輸出が追い風となっている国産フード、自然派素材や無添加を訴求した商品、肉の含有量が多い商品が好調に推移しています。その結果、飼育頭数の伸び悩み、犬の高齢化といった給餌量減少の影響を受け、近年横ばいで推移していた主食のドライフード、ウェットフードも、2022年度、2023年度ともに増加で推移するとみられます。

キャットフード市場でも、猫への健康意識が高まっており、猫がかかりやすい下部尿路疾患や腎臓の健康維持などを訴求した機能性フードの展開が一般的になっています。犬と比較し飼育頭数が安定している猫関連市場に対し、ペットフードメーカー各社からのキャットフードへの期待が相対的に高まっている様子がみられます。キャットフードの新商品投入が活発であり、また小売も猫関連売場を拡大させる傾向にあり、市場拡大の追い風となっているようです。
なお、犬、猫ともに、スナック類の市場は引き続き堅調に推移しており、コミュニケーションツールとしてだけでなく、『健康』や『安心・安全』といった切り口の商品がメーカー各社によって投入されています。

ペットフードでは、プレミアムフードよりもさらに一段高い価格帯の「スーパープレミアムフード」として、ECチャネルを主体に新規参入企業による、“エサ”ではなく“ごはん”と呼べるような、食材、生産品質、見た目にこだわったヒューマングレードフードの販売が拡大しています。
市場としては大きくないものの、ペットを家族やパートナーとして捉えて接するコンパニオンアニマル化による健康意識や安心・安全への意識の高まりから、スーパープレミアムフードは今後広がっていくことが予想されます。

ペット用品においても、ペットの健康やペットとの暮らしの充実を考えるペットオーナー(飼育者)の増加により、細分化、多様化するニーズに対応する商品展開が拡大している。特に、オーラルケア・デンタルケア用品については、参入企業による啓発活動が活発なため、今後も市場は伸長するとみられます。また、犬と比較し飼育頭数が安定している猫関連用品や、小動物用品についても市場が拡大していくものと考えられます。

こうしたペットフード、ペット用品の種類拡充や、飼い主におけるプレミアム指向の高まりによる高品質・高価格商品の需要増加などを背景に、ペット関連総市場全体は、飼育頭数の鈍化による販売数量の落ち込みを補いながら、2024年度以降も小売金額(末端金額)ベースでは拡大傾向と予測できます。しかし一方で、今後は2022年度から2023年度にかけてのような大幅な値上げの予定がないことも加味すると、市場規模の大幅な成長は期待し難いと思われます。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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