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植物系素材市場は2029年に66億円規模に増大傾向


整腸機能や免疫機能など時代ニーズに合った乳酸菌やビフィズス菌も市場拡大続く

総合マーケティングビジネスの富士経済(東京都中央区)は、複雑な現代社会を背景にメンタルケアや睡眠の質改善、脳機能改善、フェムケアなど、様々な機能訴求のエビデンス研究やヘルスクレームを活用した製品提案が活発化する生物由来の有用成分・素材の国内市場を調査し、その結果を発表しました。

イヌリン〈植物系〉市場


整腸作用や血糖値の上昇抑制、血中中性脂肪低減などの訴求機能を有する水溶性食物繊維であり、2017年頃から機能性関与成分への採用が進み市場が拡大してきました。
消費者の健康志向の高まりが追い風となり、2020年以降も毎年二桁増が続いています。2022年も「コロナ太り」を気にする消費者の増加で糖質オフニーズがより高まっていることや、便通改善や感染症への備えとして腸活への関心が高いことを受けて、機能性表示食品の届出が大幅に増加しており、市場は拡大が続くとみられます。

一般加工食品への採用も多いですが、近年はイヌリンの粉末をリパックした商品も好調であり、健康意識の高い消費者のニーズを獲得しています。その背景には、参入メーカーがイヌリンの普及に向けて啓発活動を行っていることや世界的な需要増加を受けて生産能力を増強するケースがみられることが考えられ、今後も大幅な伸びが期待される市場だと予測しています。

2022年見込 2021年比 2029年予測 2021年比
9億円 115% 66億円 2.5倍

有用微生物(乳酸菌、ビフィズス菌、他)〈動物系〉市場


乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌、酪酸菌など、生理機能が確認され機能性素材として展開されているものを対象としています。
機能として便通・便性改善や腸内環境改善による免疫機能調整・向上、アレルギー症状改善、メンタルケア、歯周病予防、口臭ケアなどが確認されています。
既に健康素材としての地位は確立されていますが、新型コロナウイルス感染症の流行により体調・免疫サポート機能が大きく注目されました。

キリンホールディングスが「プラズマ乳酸菌」の外販を本格的に開始しており、大手菓子メーカーなどが採用していることで、今後の市場拡大に貢献すると期待されます。
近年は、うつ病の改善に関する研究が進んでいるほか、認知機能への影響や抗ストレス効果など、時代のニーズにあった新たな機能性に関するエビデンスが充実しています。用途が広がることにより市場はさらに拡大していくと予想されます。

2022年見込 2021年比 2029年予測 2021年比
92億円 109.5% 128億円 152.4%

メンタルケア・睡眠素材市場


ストレス緩和や睡眠の質改善・向上、リラックス作用などを訴求できる成分・素材を含む市場。睡眠に関する訴求機能を持つ有用微生物(乳酸菌、ビフィズス菌、他)やラクトフェリンの規模が大きく、ストレスケアでは多数の機能性表示食品で受理されているGABAが全体をリード。
これらの他にもL−オルニチン、プラズマローゲン、ラフマなどがあります。かつては競合が少ない市場でしたが、近年は睡眠に関する機能研究やエビデンスの蓄積に取り組む素材メーカーが増加しているため、成分・素材間の差別化の必要性が高まっています。

フェムケア関連市場


女性の体や健康をケアする商品やサービスを表し、これらに関連するテクノロジーやプロダクトを指すフェムテックとともに認知度が増してきました。更年期症状やPMSの悩みは顕在化しにくかったのですが、フェムケアの認知が広がるとともに社会的な課題として取り上げられ、市場が形成されつつあります。
2019年に経済産業省が月経随伴症状による労働損失を年間4,911億円と試算したことも産業界に影響を与えました。

対象となる成分・素材はプラセンタやラクトフェリン、エクオール、ラフマなどがあります。機能としてはPMSや更年期症状の緩和・改善が主ですが、妊活につながる子宮内細菌叢の改善など機能が広がりつつあり、今後さらなるエビデンスの蓄積が予想されることで市場は拡大して行く見込です。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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