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通訳として創業者と出会い、スタートアップで150億円企業にした凄腕経営者・金松月氏


もの作りにこだわり、メイドインジャパンをアジアに発信してきたARTISTIC & CO.ホールディングス。同社が誇る美容機器「ドクターアリーヴォ」の販売を一手に展開するARTISTIC & CO.GLOBAL代表 金 松月氏。入社からわずか7年で代表に上り詰めた金さんの手腕は、美容業界の中で知らない人はいないだろう。
ARTISTIC & CO.ホールディングス創業者の急逝から2年近く経った現在、あらためてARTISTIC & CO.GLOBALのキーパーソンである金氏に話を伺った。[前編]

[プロフィール]
1983年、吉林省出身。日本の大学に留学後、通訳として活躍。2015年、ARTISTIC & CO.入社。現在はARTISTIC & CO.グローバル代表取締役。

Facebookを通して、私の活躍を見ていてくれた創業者 故 近藤英樹 社長

―ARTISTIC & CO.に入社されたのは、2015年と聞いています。その前も美容関係のお仕事だったのでしょうか?

 それが、まったく違うのです。大学で日本語と中国語の同時通訳と経理を専攻し卒業後はコンサルティング会社を経た後、フリーの通訳として日中の企業の橋渡しをしていました。

―ではARTISTIC & CO.ホールディングスの故近藤社長とのきっかけも通訳だったんですか?

 そうなんです。別な企業の社長様から紹介をいただきまして。それが、2014年のことでした。ただ、その時はギャラの折り合いがつかず、お仕事には至りませんでした。

ーその後、入社まで1年間のインターバルがありますが、通訳としてお付き合いはあったのですか?

 それが、ないんですよ。ただFacebookで「イイね」を押し合うだけの仲でした。ところが、ある日突然近藤社長から呼ばれて、今後中国に進出していきたいので通訳として、会社に来てくれないかと。

ースカウトされたのですね。

 そうなりますね。お会いしたときに条件や経歴などいろいろ話している中で、私が簿記の資格を持っていると知った近藤社長が、「なら経理として会社をサポートして欲しい」となったわけです。
実は、その時の私はフリーの通訳者として過渡期を迎えており法人化を考えていたタイミングでした。当時「ARTISTIC & CO.という会社は魅力的だけど、自分の会社も持ちたいので迷います」と正直に自分の気持ちを伝えたところ、近藤社長は「好きなことしていいから、やって」と一言。

―鶴の一声ですね。

 その言葉に甘えて通訳兼経理として2015年入社しながら、自分の仕事も掛け持ちしていました。これはずいぶん経ってからのことですが、近藤社長に「なんで私に声をかけてくれたのですか?」と聞いたことがありました。

―近藤社長はなんておっしゃったのですか?

 「Facebookを見ていると、君は一生懸命生きている人だということが伝わってきた。だから応援したいと思ったんだよ」と。

―近藤社長らしい言葉ですね。

快進撃のはじまりは2016年5月のビューティワールドジャパン(BWJ)。キャンディーを1トン車分売った。

 2015年11月に入社して、半年間は経理を担当していました。それまで販売や営業の経験はありませんでしたが、数字を見ていくことで仕事の流れをつかむことが出来たので、その経験は大きかったです。入社から半年経った頃にBWJがありまして。実質それが私の販売デビューでした。

―BWJでARTISTICさんと言えば、ひときわゴージャスなブースが印象的ですよね。

 そうですよね。ところが、私はゴージャスなブースの向かいにある地味なブースで一人寂しく店番をしていました。

―えっ、そうなんですか。

 地味なブースで何を紹介したかというと乳酸菌入りのキャンディー。担当商品も地味でしょ(笑)。あれ、私美容機器の会社に入社したんじゃなかったっけ?そんな感じでした。ですが、このキャンディーが大きな商談につながったのです。
ブースに立ち寄った中国のバイヤーが10万袋買いたいと言ってきたのです。

―10万袋!ですか!スケールが違いますね。

 そうなんですよ!ですが数字が大きすぎて、近藤社長からはストップかけられまして。これは絶対、騙されているって。そこで私「前金で半金もらえば騙されたとこで損はしませんよね。やらせて下さい。私が責任取りますから」って食い下がったんです。そこでやっとGOが出て。作りましたよキャンディー10万袋。納品時は1トン車のトラックがキャンディーでいっぱいになりました。

―そこから、金さんの伝説的な快進撃が始まったのですね。

ドクターアリーヴォのプロモーションが大当たり免税店で売上げ1位を達成!

 BWJでキャンディー10万袋注文して下さったお客様は、今でもお取引きいただいています。この成功が中国市場進出の足がかりにもなりました。自分で言うのも何ですが、ものすごく運が良かったと思います。

―いや、運だけではないと思います。金さんのブレない強さや勝負勘が引き寄せたと言えるのでは。もし社長にNG出された時に諦めていたら、違った展開になっていたかもしれませんよね。

 私の中に「諦める」という言葉はありません。もっと言うと「やらない。出来ない」もありません。

―キャンディーの取引が、後に中国におけるドクターアリーヴォのヒットにつながったとの事ですね?

 中国のECサイト「アリババ」の販売力はそれはもう、本当に凄いものがあります。それだけに、いくらメイドインジャパンと言っても、知名度がないと扱ってもらえません。そこで、私が考えたのは免税店でのプロモーション。中国の免税店には、日本を代表する美容メーカーが何社も並んでいます。その中において、当時のドクターアリーヴォは、中国ではまだまだマイナーな存在でした。そこで、ショップの販売員さんに対して、高額のインセンティブを払う戦略を思いつきました。
結果としてこの戦略は大成功。販売員さんたちが競うように、売ってくれたのです。無名に近かったドクターアリーヴォが免税店で売上げ1位を達成したことで、アリババに出店することが叶ったのです。

―金さんの凄腕経営者の片鱗を垣間見るようなエピソードですね。

 実はこのインセンティブ・プロモーションも社長には事後承諾だったんです。

ーそうだったんですか!社長はなんて?

 あなたが良いと思ったことは、どんどんやりなさいと。止めても無駄だと思ったのかもしれませんね(笑)。

―結果を出し続けている、金さんだからでは?

 まだ、営業としては駆け出しでしたから怖いもの知らずだったんでしょうね。リスクがあっても、チャレンジすることが重要と思っていました。
猪突猛進で突き進んでいく私を、近藤社長は広い心で受け止めてくれていました。あの社長だったから、続けられたのだと思います。本当に感謝しかありません。

入社から2年後、ARTISTIC & CO.GLOBALをスタートアップ。代表に就任。

―乳酸菌キャンディーから始まった快進撃が、プロモーションの成功でついに中国市場の拡大につながったわけですね。

 あまりにも私ががむしゃらに進むので、会社の中で浮いてしまった感じがあって。社長がよく冗談で「金魚の中にワニがいる」と。ワニは、もちろん私です(笑)。そして、あるとき自分の会社を持ちなさいとおっしゃってくださって。それが、ARTISTIC & CO.GLOBAL。2017年のことでした。

―設立2年で150億円の売上げを達成したんですよね?

 はい。1期目で25億。2期目で120億を超えました。

―凄いとしか!美顔器だけで、その数字ですか。

 ドクターアリーヴォだけの売上げです。製造が追いつかない上に、出荷前の製品が倉庫に入りきらず、会社中に溢れかえっていました。
現場は当初「また金が無理難題を言ってきた。どう考えても無理だよね」という空気でしたが、私はそんな空気をお構いなしに「やらない、出来ないはない」と発破をかけ、ついに完納。私一人では到底成し遂げられなかった。組織の力って素晴らしいと実感した瞬間でした。

次号の後編では金氏の経営理念と今後の展望についてお話しいただきます。

◆お問合わせ: 株式会社 ARTISTIC&CO. GLOBAL TEL:058-325-9788
〒501-6238 岐阜県羽島市江吉良町江中4丁目21番地 Bone 4F
https://artistic.co.jp
執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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