美容業界を牽引し、国内にとどまらず中国や韓国、ベトナムなどアジアでも絶大な人気と実力を兼ね備えたARTISTIC & CO.ホールディングスの代表取締役・近藤英樹氏が2021年2月17日に亡くなられました。62歳でした。3月15日にはお別れの会が行われ、多くの参列者が生前の故人の功績を称え偲びました。
このサイトではこれまでの道のりなどを振り返り、その業績を改めて紹介したいと思います。
同社は2008年に設立され国内のエステティックサロン、美容クリニックを中心に数々のヒット商品を開発。その後、韓国や中国を中心としたアジアへの進出を図ります。2017年にはグローバル事業を本格的に開始。
現在は中国、韓国、ロシア、アメリカ、ベトナム、フランス、イタリアにも事業を展開しており、2020年9月26日には日本の真ん中、岐阜県羽島市に大きな足跡を残す巨大なブランドビル「B-one(ビーワン)」をオープンしました。
「B-one」は近藤英樹氏の思いで、美容機器業界のNo.1を目指すという意気込みを込めて、『Beauty No.1』の頭文字から名付けられました。4階建てのモダンなデザインを採用しており、300人規模まで収容することが可能です。同ビルの完成により、これまで分散していた研究開発から、製造・物流・営業部隊を含んだオフィス機能が1か所に集約されました。研究開発と営業部門が今まで以上に密に連携を取ることで、顧客の細かいニーズを製品開発へと反映でき、さらに自社で製造工程を全て担い、また物流拠点までも一本化したことにより、高品質でスピーディーに製品を供給することが可能になりました。
日本の美容医療の融合と推進に立ち上がる
同社をここまで成長させた同氏は製品づくりだけに留まらず、業界全体のレベルアップへも尽力して来ました。日本の美容と医療を融合させ美容医療を推進しアジアを中心に世界へも目を向けるため2014年10月に一般社団法人アジアアンチエイジング美容協会を設立します。同氏の思いに賛同し発起会には500名を超えるほどの業界関係者が参集しました。
協会設立後は毎年、韓国ソウルで開催される「アジア国際美容医学フォーラム」にも参加。同フォーラムは美容大国の韓国美容外科医学会(会長/リム・ジョンハク氏)が主催する大イベントの1つで韓国、中国、日本、台湾、タイなどアジアの美容医療技術の発表の場として定着しており、かねてから同氏が「日本の美容医療とエステティシャンの実力を世界に証明したい」という思いを抱いていたため毎年、日本からエステティシャンや美容従事者を招聘し、医師や歯科医師をはじめ、エステティシャン、美容関係者が独自の技術や理論を発表できる場として環境を整えて来ました。参加した講演者からも「このような素晴らしい場を設けていただき大変嬉しい」「海外の先生方々からも注目されてものすごく光栄」といった声も多く上がりました。
このようにただ単に製品を作って売るといったメーカーではなく、常に美容業界の未来を見つめ、それに関わる人々が少しでも良い思いができればといった、そこには利害関係が存在しないほどの同氏の人柄がカリスマと呼ばれる所以でもあるのです。
同氏はこの様に製品力だけに留まらず、美容に関わる多くの仲間とともに業界発展に寄与して来ました。まだこの先、やり遂げるべきことも多かったと思いますが、同氏の遺伝子を受け継いだ多くの仲間が、その思いを実現させるために、邁進していくことに期待したいですね。
近藤英樹氏インタビューを振り返る
日本における美容エステ業界において、キーパーソンの1人といわれていたのが美容機器等のメーカーであるARTISTIC & Co.グループCEOの近藤英樹氏でした。
日本国内にとどまらずアジア、さらには世界へと視野を広げ、中長期的なビジョンで美容エステ業界を牽引していた在りし日の近藤英樹氏にインタビューした記事を編集し再掲します。
美容を極めるには医療を知ることが重要
近藤社長がエステ業界に参入されて最初に手掛けた事を教えて下さい。
近藤 美容を極めるには医療を勉強する必要がありますから、ドクターとのネットワークを広げていきました。学会や交流会には積極的に参加しエステに対して応援して頂けるドクターとのパイプを強くしていく事にウエイトを置きましたね。
その一方で製品開発も進めていきました。美容機器は簡単に言ってしまえば医療機器のライトバージョンだと考えています。ですから医療機器を学びそのメカニズムを勉強しました。それをすることでいろいろなアイデアが浮かんできます。そのためにはドクターの方々のお力が大変に重要になってきます。たくさんのドクターからアドバイスを頂きエビデンス重視の製品開発を行ったことはもちろんですが、エステの先生のご意見、また自分が客になった時にどうしてほしいかなど現場やお客様の目線からも検討し「美容医療」をテーマに開発しました。
そのブレないスタンスが日本の美容機器業界において貴社が技術力で一目おかれる存在になったわけですね。
近藤 「ドクターアリーヴォ」シリーズをはじめとして、美容クリニックやエステティックサロン向けの業務用ならびにパーソナルユースの美容機器を開発していますが、おかげさまで、日本国内で「ARTISTIC」ブランドは着実に浸透してきたかなといった手応えは感じています。
アジアそして世界へ
近藤社長は国内にとどまらず海外にもいち早く目を向けられた戦略をとられていますね。特にアジアにはかなりウエイトをおかれている様ですが、その理由を聞かせて下さい。
近藤 アジアの中でも韓国は世界的にも美容医療の先進国として位置付けされています。韓国ソウルで開催されるアジア国際美容医学フォーラムには毎回、弊社もブースを出展しています。地元韓国をはじめ世界の医療と美容の専門家や関係者の方々にも製品が大好評で購入される方も多く、新たなビジネスにもつながります。
2015年3月の開催に初めて日本からエステティシャンが技術発表を行いました。それが大好評で毎年4月の開催では日本からも多くのエステティシャンや美容家、美容関係者が独自の技術や理論を発表し日本のエステと美容の素晴らしさをアピールしています。
韓国以外でも、特に中国はまだまだ裾野は大きいです。何度も展示会には出展していますし、中国の企業様やエステサロンにもお取引いただいています。
そういった肌感覚から、ビジネスチャンスはとても大きく感じます。日本は「Made in Japan」という世界的評価を受けるブランド力を持っています。それは美容機器や化粧品についても同じで、優れた製品開発力があります。
さらに美容技術についてもその高さはもちろんですが、「おもてなし」の心に裏付けられた高度なサービスを提供しています。アジアは「美容」に関する様々な潜在力を秘めたエリアですので、まだまだ十分に魅力のある市場だと考えています。
製品に責任を持つ事がエステ業界の健全発展につながる
近藤社長の製品開発への思いを聞かせて下さい。
近藤 美容器の開発において弊社はどんな企業にも負けたくないと思っています。また負けないだけの力があると自負しています。多大な研究開発費をかけてでも、弊社よりもデイラー様、デイラー様よりもエステサロン様が利益を生める様にしてさし上げる。
そしてエステサロンに通われるお客様に「ありがとう」と言って頂けることが大切な事だと思います。とてもシンプルで基本的な事なのですが、この事を継続的に実践していく企業が多くなればエステ業界はさらに発展していけると確信しています。
私どもの様なメーカーは物作りにきちんと特化し、現存するものの真似ではなく常に新しいものを開発していく。そして安心して安全に使える様に製品に責任を持つ事。それがエステ業界の健全発展になるはずです。
ブランディング強化で年商500億円を目指します
国内外の人気女優さんもアンバサダーに起用してきました。今後さらに楽しみになりましたね!
近藤 おかげさまで日本国内では「ARTISTIC」ブランドは着実に浸透してきたかなといった手応えを感じています。日本は「メイドインジャパン」という世界的評価を受けるブランド力を持っています。その証が中国市場での販売数の急増です。日本でのTVショッピングでの反響も要因になっています。中国はアジアの中でも裾野が膨大で今後、集中的に注力していくエリアとなります。
近藤社長は以前からブランディングの重要性を強く唱えていましたね。
近藤 ブランディングはエステサロンをはじめとする既存のお取引先にとっても、それぞれのお客様に対しての物販強化となる戦略として位置付けています。
そのために後方支援の一環としてテレビショッピング等を通じて一般消費者の認知向上にも努めてきました。「ARTISTIC & Co.」のブランディングに力を入れていき、積み重ねていくことで、一般の方々に「ARTISTIC & Co.」を認知してもらう事につながると考えます。結果としてお取引先様にとってもプラスのメリットになるのではと思います。
今後の展開を教えてください。
近藤 大きく5つの構想を持っています。1つ目は常に新製品を開発していくということです。常識にとらわれない新しい発想で製品開発を行っていきます。
2つめは生産体制のさらなる拡充です。これまで以上の増産体制を図ります。
3つ目はサービスの強化になります。類似品が多く出回るようになり、正規品をご購入された方々には大変に申し訳なく痛感しています。
その対応策として、模造品防止システムを導入しました。これで正規品か類似品かが区別できるようになりました。
また下取りサービスの他、ビューティーカウンセラー教育の強化も徹底させます。
4つ目が旗艦店舗展開の拡充です。国内主要都市に直営店舗をオープンしていきます。
そして最後がプロモーションとなります。新製品の発表、雑誌などの紙媒体、デジタル媒体、テレビ、街頭広告などを総合的に活用したブランディングです。
それができるのも近藤社長が最初に挙げた、①新製品開発、②万全な生産体制、③サービス強化、④国内旗艦店の拡充があるからこそ可能になりますね。
近藤 はい、その通りです。国内のエステサロンやクリニックなどの創業当初からお付き合いいただいているお客様のおかげ様をもちまして、グループ年商で300億円にまで成長させていただきました。2021年には500億円を目指していきます!
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル