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CBD(カンナビジオール)の動向


CBD(カンナビジオール)は、大麻草から抽出される成分の1つ。ストレスの軽減、眠りを良くする、痛みを緩和するなどの効果があるとして、欧米ではドラッグストアやスーパーなどでCBDを配合したグミやチョコレート、経口オイル、クリームなどの製品が販売され、数年前から国内にも輸入製品が出回り始めています。

大麻草という植物の体内にある成分が、熱や光、酸によって変換されると、カンナビノイドという植物性成分となります。カンナビノイドは植物などに含まれるポリフェノールと同様、大麻草が害虫や紫外線から身を守るために分泌するフィトケミカルの一種。130種類ほどあるカンナビノイドのうち、主なものは「THC(テトラヒドロカンナビノール)」と「CBD」の2つに大別されます。マリファナに多く含まれるのは前者のTHCです。

THCは大麻草の花穂や葉に多く含まれ、陶酔感やハイになるなどの向精神作用が強い。THCを高濃度に含むマリファナには記憶障害などの中枢毒性があるため、日本では禁止薬物となっている一方で、CBDはTHCをほぼ含まない、成熟した茎や種子(産業用ヘンプ)が原料になっています。精神活性作用はなく、体内での作用は穏やか。抗炎症、抗不安、神経保護などの効果があることが分かってきました。

CBDに関する研究は2000年以降から盛んになり、現在、世界では300件以上の臨床研究が進行中。米国の研究では、不安や睡眠障害のある72人の成人患者の補助的な治療としてCBDを1日25mg~175mg投与したところ、不安や睡眠の改善効果が得られたということです。

欧米を中心に、CBD製品の販売が広がっている背景には、CBDは、THCと異なり、依存や乱用の可能性がないことが分かってきています。基礎研究では、CBDは血圧、免疫、情緒面などの体の恒常性を保つ穏やかな作用があるのではと考えられています。

世界保健機関(WHO)は、2018年にCBDを「依存及び乱用の可能性がなく、国際的な薬物条約の規制対象外」としました。同年にWADA(世界アンチドーピング機構)もCBDを禁止物質リストから除外しました。日本に現在流通し始めているCBD製品も、「大麻草の規制部位以外から抽出されており、THCが検出されない」などの条件をクリアしたものであり、大麻取締法には抵触しません。

CBDは医薬品としても注目されています。英国のバイオ医薬品企業、GWファーマシューティカルズは、CBD製剤「エピディオレックス」を難治性てんかん治療薬として、米国ほかG7諸国で承認を受けています。我が国でも2023年より、「エピディオレックス」の臨床試験がスタートします。

日本の法制度も変わろうとしています。厚生科学審議会では「大麻規制検討小委員会」を設置。麻薬としての大麻、THCの成分規制などはより厳罰化する一方で、医療のニーズに対しては規制の緩和に向けて今後、法改正を進め、今年の通常国会に改正案が提出される予定となっています。

ただし、既に販売されている輸入製品から微量のTHCが検出されて回収される事例があるなど、CBD製品を巡っては課題もあります。販売側は今後、整備される予定の製品の認証制度などをクリアした適正な製品を販売することが重要になります。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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