株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の理美容向け業務用化粧品市場を調査し、市場規模、都道府県別やカテゴリー別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
2023年度の理美容向け業務用化粧品市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年度比102.0%の1,568億円となった。前年度の行動制限緩和に伴う理美容サロンへの来店客数の回復や、それに伴う施術・物販売上の伸長で好調な勢いを継続した。サロンではメニュー価格改訂が進んでおり、理美容業界全体で価格面での底上げ効果がみられた。また、サロン店頭やECチャネル(オフライン・オンライン)によるサロン専売化粧品の購入スタイルも定着した。
一方、国内イベントの開催解禁や海外への渡航制限緩和が進むなど、その他の趣味や娯楽の支出が増加したことで、美容や身だしなみ意識の高まりを追い風とした美容への支出も伸び悩み、市場伸長率は鈍化した。(グラフ)
メーカーの価格改訂に加え、「物流2024年問題」へのディーラー各社の対応が活発化
世界的な原料需要の急拡大による原材料価格高騰の影響により、原材料サプライヤーは現在に至るまで数次の原材料価格改訂を行ってきた。国内の理美容化粧品メーカーは、自社内部でのコスト吸収努力の継続的な取り組みを続けてきたが、2022年後半から製品価格改訂を開始している。
また、2024年4月から適用される働き方改革関連法に伴い、トラックドライバーの時間外労働時間制限による「物流2024年問題」が懸念される。1日あたりの長距離輸送能力が大幅に低下し、従来通りの物流量の目的地への輸送が維持できなくなることなどが予想されている。
物流事業者のサービスコストが上昇し、理美容サロンやサロンの利用客に輸送する際のコストへの影響が懸念されており、製品価格の更なる改定の可能性もある。これらのことから、特に理美容化粧品メーカー各社の製品を取扱うディーラーは、物流ロジスティクスの体制強化に取り組んでいる。
理美容向け業務用化粧品市場は、コロナ禍前とほぼ同等の市場環境に戻っているが、消費者は状況によるマスク着用や外出を控えたテレワークなどの行動の継続も見込まれるため、完全な市場回復の実現とは言い難い。メーカー各社による業務用化粧品価格改訂の動きは、大手・中堅メーカーを中心に2023年度は相当程度進んだ。また、各種原材料やエネルギーのコスト、物流費、人件費の上昇傾向は落ち着いておらず、2024年度以降、製品の更なる価格改訂の可能性もある。
価格改訂が一巡する2025年度前後からは、少子化に起因する美容人口の減少という構造的要因から、理美容向け業務用化粧品市場は減少トレンドで推移していく見通しである。
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル