新型コロナウイルスのPCR検査数などの増加に牽引され伸長傾向なのが遺伝子検査市場です。
富士経済では新型コロナウイル検査の市場調査と合わせて、検査室で行う遺伝子、病理、細菌検査と、キットなどを用いて検査室以外で行うことができるPOC(Point Of Care)検査の検査薬と検査装置の市場調査も実施し、その結果も公表しています。
2025年の遺伝子検査の検査薬市場は308億円規模か
遺伝子検査の検査薬市場。ウイルスや微生物の遺伝子を検出することで、感染の有無や治療薬の効果を判定する遺伝子検査の検査薬を対象とした調査では、肝炎、結核、性感染症など、主に感染症関連の検査項目で構成されています。
微生物の培養では結果が出るまで時間がかかりますが、遺伝子検査は当日中に結果が得られるため、自動化や簡便化の進展とともに検査機会が増加したこととで検査薬市場も堅調のようです。
2020年は、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行し、最も早く保険適用された遺伝子検査がスタンダードな検査として普及したことで、検査薬市場が大きく拡大しました。
一方で、感染症対策の浸透や医療機関への受診控えによる検査機会の減少により、その他感染症の検査項目では縮小がみられました。
今後数年は新型コロナウイルス検査薬が市場の60%以上を占めると推察されます。
2020年 222億円(前年比2.2倍)
2025年予測 308億円(2020年比 138.7%)
2025年の病理検査の検査薬市場は111億円規模に伸長見込み
病理検査の検査薬市場。採取した細胞や組織を観察し病変を診断する病理検査の検査薬(染色液・検査キットなど)を対象とした調査で、検査薬で病変に特異的に発現する特定抗原を選択的に着色することで、観察や診断が容易となります。
近年は抗体医薬品の適性や治療効果を判断するためのコンパニオン診断薬として、免疫組織染色を中心に市場が形成されています。
がんの治療に欠かせない検査であることから2020年においても新型コロナウイルス感染症の影響はあまり受けておらず、市場は前年比3.2%増となりました。
今後の市場は、治療薬の適応拡大による利用増加などで拡大を続け、2025年には2020年比15.6%増 の111億円が予測されます。
2020年 96億円(前年比103.2%)
2025年予測 111億円(2020年比 115.6%)
2025年は2020年比111.7%の248億円市場に増加に転じる見込み
細菌検査の検査薬市場。培養することで微生物の有無を判定する細菌検査の検査薬(培地・器具など)を対象とした調査。
2020年はマスクの着用や手洗いなどの新型コロナウイルス感染症予防対策がほかの感染症予防にも奏功した事や、患者の医療機関受診控えによる検査機会が減少したことにより市場は縮小しています。
感染症対策の浸透により培地や装置用検査薬は2020年に続き、2021年も縮小するとみられます。
2022年以降は回復が期待されるものの、培地は低価格化と自動化による使用量の減少により回復は緩やかとみられます。
一方、装置用検査薬は手作業および目視(マニュアル)からの移行により2024年には2019年 の規模を上回るとみられています。
2020年 222億円(前年比 89.5%)
2025年予測 248億円(2020年比 111.7%)
2025年のPOC検査薬市場は1,000億円超えか
POC検査の検査薬市場。検査室以外でも行える簡便・迅速なPOC検査薬・検査キットを対象とした調査。尿試験紙、HCG・LH、便潜血、肝炎、呼吸器感染症、消化器感染症、糖尿病、心筋障害の関連項目、血糖自己測定などがあります。
細菌検査の検査薬と同様に、マスクの着用や手洗いなどの新型コロナウイルス感染症予防対策が他の感染症予防にも奏功した事と、検査機会が減少した事により市場は縮小し、2020年は1,000億円を下回っています。
これまで市場を牽引してきたインフルエンザ抗原迅速検査キットは、前年比51.3%減の75億円と大きく落ち込見ました。
また、市場の40%以上を占める血糖自己測定装置用検査薬は、在宅時に実施する検査のため影響を受けにくいとみられていましたが、受診控えなどの診療機会減少による自己管理意識の低下や、新規利用者の減少により縮小しました。
2020年 938億円(前年比 84.9%)
2025年予測 1.087億円(2020年比 115.9%)
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル