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クレアチンは認知機能や記憶力を改善!?


クレアチン摂取をテーマに執筆され、査読システムのあるジャーナルに掲載された研究論文はこれまでに1,000件をはるかに超えています。多くのエビデンスが、筋肉量や除脂肪体重、筋力パフォーマンス、およびトレーニング後の回復におけるクレアチン一水和物の有用性を示しています。

一方で、近年、クレアチンの研究の焦点は、骨格筋やスポーツ・運動のパフォーマンスから、健康や臨床での応用の可能性へと移ってきています。このパラダイムシフトの主要なターゲットの一つに、脳の健康と機能に対するクレアチン摂取の影響が挙げられます。

動物を用いた研究からは、クレアチンが学習と記憶を含む認知タスクにおいて重要な役割を果たすと報告されています。例えば高齢のマウスにクレアチンを与えると、物体認識記憶が改善するなどの変化が認められ、さらにニューロンの成長、神経保護作用なども観察されると報告されています。

クレアチンによる認知機能への影響には性差があることが示唆されています。アルツハイマー病のモデルマウスのメスは、9週間のクレアチン摂取によって、空間認知力が向上し逃走すべき条件での反応時間が短縮しました。しかし、オスマウスではそのような効果はみられなかったようです。

ヒトを対象とする知見も増えており、それら個々の研究報告は、クレアチン摂取により認知機能の改善が実証されたとするものと、何の変化もみられなかったとするものが混在しています。効果がみられたとする研究では、これらの臨床研究で報告された対照的な結果は対象者の年齢の違いとともに、摂取量の違い(20g/日と約2.2g/日)が関係している可能性もあります。

全体として、睡眠不足、精神疲労、低酸素症など、脳に負荷がかかっている場合に、クレアチンの摂取により認知機能の評価指標が改善する傾向がみられます。その影響は、研究で用いられた認知機能の評価手法と介入期間・用量に依存する可能性があるようです。

クレアチンと外傷性脳損傷

脳震盪を含む外傷性脳損傷(traumatic brain injury;TBI)の有病率は低いとは言えず、症状が持続していたり、遅発性の神経変性疾患を患っている人が相当数に上ります。クレアチンはTBIの治療にも有用な可能性が示唆されており、動物モデルでは、TBI誘発前のクレアチン投与が神経保護効果を発揮するとする一定のエビデンスがあります。

ヒトでの研究では、TBIと診断された子ども(1~18歳)を対象とした非盲検無作為化対照試験(RCT)で、6カ月間クレアチン(0.4g/kg/日)摂取すると、いくつかの客観的評価指標に対してプラスの変化が現れると報告されています。また、頭痛、めまい、倦怠感などの主観的指標も改善したとんこと。

性差については十分に検討されていません。一般に、女性は男性に比べて外傷性脳損傷のリスクが高く、より重度の有害症状を経験していることを考慮すると、今後の研究ではクレアチン摂取のTBIへの効果を性別に検討する必要があるでしょう。全体として、クレアチンの摂取はTBIに関連する症状の抑制に有用な可能性があると言えるかもしれません。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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