総合マーケティングビジネスの富士経済は、新型コロナウイルス感染症に関連する特需は収束したものの、消費者の健康意識は確実に底上げされており、今後もライトな健康対策需要を取り込んでいくと期待される健康志向食品(明らか食品、ドリンク類)の国内市場を調査し、その結果を公表しました。この調査では、機能性成分を添加・強化し、それを訴求する一般加工食品(明らか食品、ドリンク類)を健康志向食品とし、29の訴求効能別に市場を分析しています。
健康志向食品(明らか食品・ドリンク類)の国内市場は2022年が、リニューアルや新商品展開によって脂肪・コレステロール値改善が躍進したほか、社会的に注目が集まった睡眠サポートや人流増加によって市場環境が好転した滋養・強壮、ビタミン・ミネラルチャージも高い伸びとなり、市場は前年比7.7%増の1兆6,433億円となりました。
2023年は、人流増加が本格化したことに加え、猛暑による後押しを受けてドリンク類を中心に需要が活性化しています。脂肪・コレステロール値改善や睡眠サポート、ビタミン・ミネラルチャージなどが引き続き需要を取り込み、市場は前年比4.9%増の1兆7,243億円が見込まれます。
明らか食品は機能系ヨーグルトの需要減退がみられますが、オーラルケア食品の需要回復などプラス要因もみら、またドリンク類は乳酸菌飲料や、人流増加や猛暑を背景に高カテキン訴求の濃い系緑茶、止渇性の高いビタミン・ミネラル配合の商品が需要を獲得し続伸しています。
睡眠サポート市場は拡大傾向ですが一般医薬品商品の参入でユーザーはより訴求効果のあるものへとシフトしていく懸念も
睡眠サポート市場も上昇気配の様です。睡眠サポート商品では、乳酸菌類、テアニン、GABAなどを主成分とし、睡眠の質の向上・改善などを訴求した商品を対象としていますが、主な商品として、明らか食品では「メンタルバランスチョコレートGABAフォースリープ」(江崎グリコ)、ドリンク類では「Yakult1000」、「Y1000」(いずれもヤクルト本社)などがあります。
睡眠サポート市場は2015年の機能性表示食品制度の開始によって“睡眠の質向上”などの機能を明確に表示できるようになり、商品投入が進んだことで形成されました。
2022年の市場は、前年に全国発売となった、睡眠の質向上などを訴求する「Yakult1000」、「Y1000」の大ヒットにより急伸。コロナ禍による生活リズムの乱れなどにより睡眠に対して悩みを抱える消費者が増加したことから、 睡眠の質向上に対する関心が高まり、 多くのメディアから睡眠対策情報が発信されたことで需要が顕在化しました。
2023年は、睡眠に対する意識が引き続き高く、食品・飲料での睡眠対策が消費者に浸透しつつあり「Yakult1000」、「Y1000」の好調が続いているほか、新商品投入も活発であることから、市場は前年比47.7%増の768億円が見込まれます。
睡眠サポート市場は今後も拡大していく様相で、一般用医薬品からも睡眠対策を訴求した小瓶タイプの商品が展開されており、剤形も近いことから、より機能を求めるユーザーは一般用医薬品へシフトする懸念もあります。
ビタミン・ミネラルは消費者の基礎栄養補給意識の高さで市場は拡大するも、無糖飲料志向の強まりや値上げによる変え控え懸念も予想されます
ビタミン、ミネラルといった成分を含み、各種栄養成分の補給やバランス維持を訴求した商品を対象としたビタミン・ミネラルチャージ市場。
主な対象商品は、明らか食品では「塩分チャージタブレッツ」(カバヤ食品)、ドリンク類では「C.C.レモン」シリーズ、「グリー ン ダ・カ・ ラ」(いずれもサントリー食品インターナショナル)、「世界のKitchenからソルティライチ」(キリンビバレッジ)、「キレートレモン」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)などがあります。
2022年は、7月の気温が高かったことから熱中症対策としての需要が増加しました。また、コロナ罹患時やワクチン接種時にパウチゼリー飲料を飲用するといった特需が発生したことで、市場は前年比二桁増となりました。
2023年は、記録的猛暑によってドリンク類、タブレット型商品の多くが大幅に伸びています。パウチゼリー飲料の、前年までの特需が落ち着いていることから、市場の伸びは前年より鈍化するものの、前年比7.1%増の1,467億円が見込まれます。
特需は収束したものの、消費者の基礎栄養補給の意識継続に伴い、今後も市場は拡大が予想されますが、一方で、対象とした商品は有糖が多く、消費者の無糖飲料志向が高まっていることから、需要シフトも懸念されます。また、近年の値上げで商品によっては販売数量が減少しており、今後も値上げが実施されれば買い控えも懸念されるでしょう。
脂肪・コレステロール値改善食品市場が活況
2022年の市場は、2019年に機能性表示食品としてリニューアル発売された「お~いお茶 濃い茶」の躍進が続いたほか、「伊右衛門 特茶 TOKUCHA」の復調、機能性表示食品としてリニューアル発売された「サントリー烏龍茶 OTPP」や新商品の「伊右衛門 濃い味」(サントリー食品インターナショナル)の上乗せによって急拡大しました。
2023年は人流回復によるCVS来店客数の増加、 猛暑により止渇需要が増えたことなどが市場の追い風となっています。また、飲料メーカーを中心とした値上げは、販売数量は落ち込むものの、販売金額ではプラスとなるケースが多く、ドリンク類の中では濃い系緑茶が伸びています。さらには商品投入も相次ぎ、市場は前年比9.9%増の3,138億円が見込まれます。
商品投入が活発であり、中高年の生活習慣病予防に留まらず、脂肪対策やそれに付随するベネフィットの提案によってダイエットや美容ニーズなども取り込むなど、今後も市場は堅調な推移が期待されます。
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル