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機能性表示食品「認知機能」表示115社に表示改善指導 ~消費者庁~


2022年3月31日、消費者庁は記者会見を開き、表示対策課長は「機能性表示食品の「事後チェック指針」に基づき、認知機能領域の機能性表示食品のインターネット広告表示をターゲットにした一斉監視を今年2月に行った結果、3月30日までに健康増進法と景品表示法に抵触するおそれがある合計115社(131商品)に表示改善指導を行った」と公表しました。

特にその中でも両法に抵触の恐れのある3事業者(3商品)に対しては直接口頭で改善を要請、その他の12事業者(128商品)に関しては主にメールや書面で指導を行ったとも述べました。

同庁表示対策課長は115事業者が行っていたネット広告表示について、「機能性表示食品として届け出された表示の範囲を逸脱していると判断して改善を指導した。

景品表示法(優良誤認表示)と健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)の双方を検討し今回の指導となった」とし、さらに「健康増進法と景品表示法ではそれぞれの法体系には違いがあるが、健康増進法は必ずしも商品の優良性に結び付かなくても健康の増進に関して事実と異なる表示をしていれば抵触するという法の建付けになっている」と述べ、今回の112事業者に対しては「形式的に、健康保持増進効果について事実と異なるのではないのかという部分を取り出して指導した」と述べています。

一方、景品表示法は「事実誤認だけでなく、商品の優良性に結び付く誤認も規制している」として、今回健康増進法と景品表示法の両法に基づき改善指導した3事業者については、「主に景表法の観点からチェックした。商品の内容について表示内容全体から優良性を強調しているかどうか。物忘れや認知症の治療や予防効果等の医薬品的効果があるかのような表示に主眼を置いて改善を指導した」とも述べています。

スピードを重視して今回は措置ではなく指導に!

届出表示から逸脱して「物忘れや認知症などの治療または予防効果等の医薬品的効果効能が得られるかのような表示」としたネット広告の具体例としては、「認知症予防の救世主〇〇大学教授監修」「2025年には65歳以上の5人に1人が認知症に」「認知症は物忘れだけではありません! トイレで用を足せない、徘徊する、暴言を吐く、幻覚を見る、異性に抱きつく、暴力を振るう、不潔なままでいる、認知症の原因は40代から始まっている!」「認知症の代表的疾患であるアルツハイマー病は、記憶をつかさどる海馬の萎縮が脳全体で起きることにより発症」などがあげられており、これらの表現が商品の写真などと一緒に広告に掲載されていたことで、優良誤認表示に抵触の恐れのあると判断したということです。

また、「措置命令を行うには、訴訟にも耐えうる証拠に基づく事実認定が必要になり、その証拠固めに時間がかかる。ある意味問題となる表示が思いのほか広がっている状況を踏まえてスピード感を優先し指導を行った。行政指導は相手方の任意を前提としているために法的効果があるものではないが、まずは行政指導の結果を公表して、同時に消費者にも注意喚起を行うということで今回は指導に抑えた」とし、また公表が年度末になったことに関しては「たまたま2月に行った一斉監視の取りまとめのタイミングは重なっただけで他意はない」とも述べています。

今回の行政指導件数は、認知機能領域の機能性表示食品として販売されている数の半数以上で、指導された事業者の中には、「事後チェック指針などに照らしても問題のない広告表示だったと思うが、あとが面倒なので言われるままに修正したが納得はしていない」といった声も複数聞かれます。

機能性表示食品では2017年、景品表示法に基づき販売事業者16社に措置命令、うち9社に対して263万円~4893万円の課徴金納付命令が出されたケースがあります。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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