森の環(本社富山県高岡市)は医師(整形外科、内科、婦人科、リウマチ科)を対象に「ビタミンDと骨の健康」に関する調査を行い、その結果を公表しています。
骨粗しょう症という言葉を聞くと、多くの方が「高齢者に多い病気」というイメージを抱くかもしれません。しかし、実際には骨粗しょう症の低年齢化も課題となっています。
そもそも、骨粗しょう症は本当に高齢者だけの問題なのでしょうか。
骨量は20歳頃までにピークに達し、40歳ごろまで維持されますがその後は徐々に減少していくことが指摘されています(参照:骨粗鬆症財団)。
また、厚生労働省から発表され今年4月からスタートした健康日本21(第三次)では、「若年女性のやせ」による骨量減少や「骨粗しょう症検診受診率」の低さも問題視されており、改善に向けた取り組みが求められています。
(参照)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html
高齢になっても骨の健康を保つために、今からできることは何があるのでしょうか。
9割以上の医師が骨粗しょう症は増加傾向にあると回答
「骨粗しょう症患者は増加傾向にあると思いますか?」という質問に、9割以上の人が「はい(94.6%)」と回答しました。
骨粗しょう症の増加傾向に対する医師の認識が非常に高いことが明らかになりました。骨粗しょう症は、1,300万人を超えて増加の一途をたどり、社会課題となっています。
「増加している原因としてどのようなことが考えられますか?」と質問したところ、「栄養バランスの偏り(55.5%)」が最も多く、「高齢者の増加(45.8%)」、「若者のやせ(37.9%)」と続きました。
骨粗しょう症の背景には、栄養バランスの偏りが大きく関与していると考える医師が多いことがわかり、他にも高齢者の増加や、若者のやせも課題と感じていることがわかりました。(グラフ1)
では、骨粗しょう症になることで、どのような問題があるのでしょうか?
骨粗しょう症の大変さはどのような部分だと感じますか?」と質問したところ、「慢性的な痛み(44.9%)」が最も多く、「繰り返す骨折の治療(41.9%)」、「行動制限によるストレス(34.8%)」と続いています。
慢性的な痛みが最も大きな問題として挙げられていることは、日常生活の質に深刻な影響を与えていることを示唆しています。(グラフ2)
骨の健康を意識した生活はいつからすべきか?
「骨密度検査はいつ頃から受けるべきですか?」と質問したところ、以下のような回答になりました。
・『20代(12.3%)』
・『30代(35.7%)』
・『40代(27.4%)』
・『50代(9.1%)』
・『60代(1.9%)』
・『70歳以降(0.2%)』
今回の調査では『20代』『30代』『40代』を合わせると約8割の医師が、骨の健康を意識した生活を3 0代前後から始めるべきだと考えていることがわかりました。(グラフ3)
なぜその年代から意識をすることが必要だと考えているのでしょうか。
『20代』と回答した医師
・運動量を増やす いい機会だから(30代/女性/東京都)
・若年時の生活が影響するから(50代/男性/福岡県)
『30代』と回答した医師
・その年齢から患者が増えている(40代/男性/神奈川県)
・やはり年老いてからでは手遅れなので(40代男性/愛知県)
『40代』と回答した医師
・少し早めの方が良いから(50代/男性/東京都)
・閉経後から急激に減少するから(50代/男性/千葉県)
加齢による骨密度の減少や生活習慣の影響が顕在化する40代以降に備えて、早期からの予防が必要だと考えられている傾向がみられました。
骨密度低下を早期から予防するためには「ビタミンD」の摂取が必要
「骨密度低下を防ぐためにはどのような対策が必要だと考えますか?(複数回答可)」と質問したところ、「ビタミンDを摂取する(56.1%)」が最も多く、「適度な運動を行う(52.0%)」と続いています。
半数以上の医師が、骨密度低下防止のためには、ビタミンDと運動が重要な要素と認識していることが示されました。
では、ビタミンDを摂取することで、骨密度の低下を予防できるのでしょうか。
『ビタミンDを摂取する』と回答した方に「ビタミンDを意識して十分に摂取することで、骨密度低下を早期に予防する可能性があると考えますか?」と質問したところ、「とても思う(48.2%)」、「少し思う(47.6%)」がほとんどを占め、ビタミンDの摂取が骨密度に重要な影響を与えるという認識が、非常に高いことが示されました。(グラフ4)
現代人は十分にビタミンDを摂取できているのか?
「現代の生活習慣において、体に必要なビタミンDは十分に摂取できていると思いますか?」と質問したところ、以下のような回答になりました。
・『やや思う(42.2%)』
・『あまり思わない(21.9%)』
・『全く思わない(3.1%)』
『とても思う』と『やや思う』を合わせると、7割以上の方がビタミンDは十分に摂取できていると回答したものの、4人に1人はビタミンDの摂取が足りていないと考える現状もあるようです。
実際に、東京慈恵会医科大学で2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に調査を実施したところ、98%がビタミンDが不足していた結果も出ており、今後の超高齢化社会に向けビタミンDの必要性が課題となっています。
(参照:東京慈恵会医科大学)
https://www.jikei.ac.jp/news/pdf/press_release_20230605.pdf
医師の間でもビタミンDの不足に対する認識が十分でない場合があると考えられます。そのため、ビタミンDの重要性を広く共有していくことが求められているように思われます。
すでに、現代の生活習慣においてビタミンDが十分に摂取できていないと考える医師に、そのように考える理由を聞いたところ、「偏った食生活(56.4%)」が最も多く、「ビタミンDを含む食品を食べる機会が少ない(36.9%)」、「日焼け対策によるビタミンD生成不足(36.1%)」と続きました。
ビタミンD不足は、偏った食生活や食品選択の機会の少なさ、日焼け対策による生成不足など、複数の要因に起因していることが示されました。(グラフ5)
この調査結果から、医師の間で骨粗しょう症の増加傾向に対する危機感が広がっていることが明らかになりました。増加している理由として栄養の偏りや運動不足、高齢化などが挙げられました。また、骨の健康を保つためにはビタミンDの摂取や適度な運動が必須であると考えられ、30代前後から骨の健康に対する意識を持つ必要性が示されました。
骨密度低下を防ぐためにはビタミンD摂取が必要と考える医師が約6割おり、意識して摂取することで骨密度低下の予防に効果的とほとんどが回答しました。しかし約3割の医師が、現代の食生活では必要なビタミンDを十分に摂取ができていないと感じていることがわかりました。
その理由としては偏った食生活や日焼け対策が主な要因として挙げられており、特にビタミンDを含む食品の摂取や偏った食生活を改善する必要性がありそうです。
ビタミンDは、近年、骨の健康のほか、免疫やメンタル面にも重要であることがわかり、注目を集めています。忙しい現代人の食生活に手軽に取り入れられる、ビタミンDを多く含んだ食品を活用して効果的に摂取することで、骨粗しょう症予防にも貢献するのではないでしょうか。
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル