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【国内美容市場動向】スキンケア市場は1兆3000億円規模に


オンラインでの顧客コミュニケーションなどコロナ禍での新たな販促ツールの創生で市場は回復傾向

総合マーケティングビジネスの富士経済(東京都中央区、清口正夫社長) は、メーカーによる需要の創出やオンラインでの販路・顧客コミュニケーションの強化などでコロナ禍に対応した動きをみせるスキンケアと、商業施設の営業再開や外出機会の増加、未使用者の需要掘り起こしにより拡大が見込まれるフレグランスの国内美容市場を調査し、その結果を公表しました。

スキンケア市場
オンラインでのコミュニケーション強化で市場が拡大

2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響により3月頃より海外からの渡航者の入国制限が行われ、インバウンド需要が急速に減少しました。
また、緊急事態宣言が発出され商業施設が休業したことから、洗顔料やクレンジングなど全8品目が縮小し、市場は前年比14.5%減の1兆2,651億円となっています。

一方、マスクの着用で敏感肌やニキビ、毛穴の目立ち、角質ケアなど肌の悩みが生じやすくなったことや、在宅時間増加を背景にスキンケアを見直す消費者が増え、ステップにスペシャルケアを加える動きがみられました。

2021年は、緊急事態宣言下でも、百貨店などでは化粧品を生活必需品に位置づけ、時短ながらも営業を継続する店舗があることから、前年よりも市場への影響は大きくないと予想され、商業施設の営業再開に連動して市場も回復に向かうとみられます。

メーカーがマスク着用時のメイク崩れ防止を目的としたミスト商品を発売し需要を促したことや、オンラインでの販路・顧客コミュニケーションの強化などコロナ禍に対応した施策から、市場は2020年比3.4%増の1兆3,076億円が見込まれます。

2020年 2019年比 2121年見込 2020年比
1兆2,651億円 85.5% 1兆3,076億円 103.4%

フレグランス市場
フレグランス未使用者の開拓が進む

2020年は、生活様式の変化によって外出時などに使用するのではなく、気分転換をするために使用するなど目的が変化しました。
このことでブランド側がライフスタイルを提案し、それに沿った商品を展開するライフスタイル提案型ブランドを中心に需要を獲得しました。

一方、百貨店を中心とする外資系のうち、販売員の提案やカウンセリングを受けながら購入を検討できるプレステージブランドでは、店舗の休業や時短営業により 苦戦したブランドが多かったほか、販売員の提案を前提とせず商品を選ぶセルフブランドも外出時の使用が多いため縮小し、市場は前年比17.9%減の381億円となりました。

2021年以降は、商業施設の営業継続や外出機会の増加に伴い、従来の目的でフレグランスを使用する場面が増えると予想されます。

また、ライフスタイル提案型ブランドを中心としたフレグランス未使用者の開拓の流れが続き、2021年の市場規模は2020年比5.8%増の403億円が見込まれます。

2020年 2019年比 2121年見込 2020年比
381億円 82.1% 403億円 105.8%

モイスチャー(スキンケア)市場
マスク荒れに悩む消費者の取り込みで市場回復傾向

2020年は、シワ改善を訴求した商品の投入が相次ぎ、機能強化によって需要を獲得したほか、ウェブ広告によって認知度を高めた新興通販ブランドが好調でした。

しかし、新型コロナの影響で、3月頃よりインバウンド需要が急速に減少したことに加え、緊急事態宣言の発出による百貨店など商業施設の臨時休業により、制度品系メーカーのプレステージブランドや百貨店ブランドが低迷し、前年比9.9%減の2,892億円となっています。

2021年は、緊急事態宣言下でも百貨店など一部の商業施設では化粧品を生活必需品に位置づけ営業を継続するケースがみられ、プレステージブランドの需要回復が予想されます。
前年より徐々に認知度を高めてきた韓国発の「シカクリーム・バーム」が肌荒れなどへの鎮静効果を訴求することで“マスク荒れ”に悩む消費者を取り込んでおり、市場は2020年比2.5%増の2,965億円が見込まれます。

2020年 2019年比 2121年見込 2020年比
2,892億円 90.1% 2,965億円 102.5%

美容液(スキンケア)市場
デジタルカウンセリング体制の整備で市場は回復

2011年以降、洗顔後に使用し、その後の化粧品の効果を高めるブースターの市場浸透やインバウンド需要の取り込みによって市場は拡大してきました。
しかし、2019年は消費税増税後の消費マインドの低下や中国での新EC法施行によるソーシャルバイヤーの買い控えで市場の伸びが鈍化しています。

2020年は、在宅時間の増加からスキンケアを見直す消費者が増えたことでスキンケアステップに新たにブースターを取り入れる動きがみられ、毛穴ケアやアクネケアといったコロナ禍で生じた肌の悩みに対応した商品は好調でした。
しかし、カウンセリングによる使用提案が重要な品目であるため、店舗休業が大きく影響したほか、新型コロナの影響によりインバウンド需要も減少したため市場は縮小しました。

さらに営業時でも、店舗滞在時間をできるだけ短くしたいという消費者の意向や、美容液はスキンケアステップにとって必須アイテムではないことから、新規需要獲得が難しかったため、市場は前年比16.5%減の2,214億円となっています。

2021年は、消費者の購買活動が前年より回復するとみられ、デジタルカウンセリングを行う体制も整いつつあることから市場は回復に向かう推察されます。
高齢化に連動した消費者の抗老化美容液への需要増加や、メーカーのブースターの使用提案などにより、市場は2020年比4.7%増の2,317億円が見込まれます。

2020年 2019年比 2121年見込 2020年比
2,214億円 83.5% 2,317億円 104.7%

オードパルファン・オードトワレ(フレグランス市場)
商業施設の営業再開で市場は拡大傾向

近年、プレステージブランドがポップアップイベントの開催やミニサイズ商品の追加で、若年層を中心とした新規顧客の取り込みを進めてきました。

また、比較的高価格帯の商品を取り扱うメゾンフレグランスブランドがフレグランス上級者の需要を獲得し、市場は拡大してきました。
2020年は、イベントや対面販売の自粛に加え、販売時間も限られたことから実績を落としたブランドが多く、前年比17.0%減の244億円となっています。

一方、香りによる「癒し」や「リフレッシュ」といったニーズが高まっており、一部のライフスタイル提案型ブランドではルームフレグランスやボディケアアイテムをフックとした派生需要が好調でした。
また、メゾンフレグランスブランドへのシフトによる単価アップや、試香が難しい中で知名度のあるファッションフレグランスのロングセラー商品が好調になるなどの動きがみられました。

2021年以降も、未使用者の需要掘り起こしやメゾンフレグランスブランドへのシフトによる単価アップが続くほか、商業施設などの営業再開によって市場の拡大が予想され、2021年の市場規模は、2020年比5.7%増の258億円が見込まます。

2020年 2019年比 2121年見込 2020年比
244億円 83.0% 258億円 105.7%

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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