富士経済が、定期接種化が期待できるRSウイルスワクチンや定期接種が開始された帯状疱疹ワクチンなど、話題豊富な国内のワクチン市場の調査結果を公表しました。
定期接種化が期待されるRSワクチン
2024年度にRSウイルスワクチンは、「アレックスビー」(グラクソ・スミスクライン)が成人(発売時60歳以上)を対象に、「アブリスボ」(ファイザー)が母子免疫ワクチンとして妊娠24週から36週の妊婦と60歳以上の成人を対象に発売されたワクチンです。
RSウイルス感染症はRSウイルスによって引き起こされる呼吸器系の感染症で、特に乳幼児や高齢者、基礎疾患を持つ人が感染すると重症化しやすく、肺炎や細気管支炎などを引き起こす可能性があります。一部の産婦人科で推奨された妊婦、また、ワクチンがあることを知った妊婦の接種がみられ、日本でも市場が立ち上がりました。しかし、接種料金が高額であったこと、自治体の助成が進まなかったこと、RSウイルス感染リスクの認知が進まなかったことなどから、市場は小規模にとどまりましたが、2025年度は、妊婦に対して足利市や袋井市など一部の自治体が助成を開始し接種が増加していることから、市場は前年度比2.1倍の17億円規模になる見込みで、今後も助成を開始する自治体が増え、啓発活動も進むことから、徐々にですが接種が増えていくとみられます。
RSウイルス検査は、必ずしもRSウイルス感染症が疑われる全ての患者に行われるわけではないため、流行把握が難しい状況にあります。また、定期接種の対象年齢を何歳にするかなどの課題も多いです。早期に定期接種化されれば、市場拡大ペースは早まると思われます。(グラフ1)

グラフ1 ※出典:富士経済
2025年より定期接種が開始された帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹ワクチンの2024年度は、ワクチンの接種を助成する自治体が増えたものの、2025年度から定期接種が始まることからその数は限られました。また、大都市での助成がみられず、都内などは2023年度で任意接種が一巡していたため市場は微減となりました。
2025年度は定期接種が開始され、2025年度から2029年度まではキャッチアップ接種も行われることから、市場は大きく拡大し、前年度比4.6倍の816億円が見込まれます。市場はキャッチアップ接種の最終年となる2029年度まで800億円超の規模を維持すると思われますが、以降は縮小に転じると予想されます。(グラフ2)

グラフ2 ※出典:富士経済
2025年度の市場は微増
ワクチン全体の2024年度の市場は、新型コロナワクチンの定期接種化、最終年となるヒトパピローマウイルスワクチンのキャッチアップ接種への駆け込み需要などにより、前年度比65.3%増と大きく拡大しました。しかし、2025年度は、帯状疱疹ワクチンの定期接種化とキャッチアップ接種の開始などがプラス要因となるものの、新型コロナワクチンの国からの助成終了が大きなマイナス要因となり、微増にとどまるとみられます。
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※出典:富士経済
今後は2020年代後半から2030年代は新生児減少や高齢者人口増加ペースの鈍化、接種疲れの軽減を目的とした乳幼児・小児ワクチンの混合化などにより減少する傾向になる見込みです。
一方、近年発売されるワクチン価格は高い傾向にあるため、新たなワクチンの発売により1本当たりのワクチン単価は上昇するとみられます。ノロウイルスやデング熱に加え、海外ではサルモネラ菌やヒトメタニューモウイルス、サイトメガロウイルスなど数多くのワクチン開発が進んでおり、これから新たなワクチン、また、新たな組み合わせの混合ワクチンの発売が期待されます。ワクチン単価の上昇は、接種本数の減少を補うとみられ、当面市場は拡大傾向で推移すると予想されます。

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル