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ビタミンDの重要性


日本人のビタミンD不足が深刻

東京慈恵会医科大学の研究グループは、ビタミンDのがん再発や死亡抑制効果に関する臨床試験「アマテラス試験」を実施しています。
この試験では、消化管がん患者を対象にビタミンDサプリメントの効果を検証し、再発や死亡リスクが8%減少する傾向が見られましたが、統計的な有意差は確認されませんでした。
しかし、がん抑制遺伝子「p53」に変異がある患者に対して、ビタミンDサプリメントが特に効果的である可能性が示唆されました。
これを受け、2022年1月から「アマテラス2試験」を開始し、特にp53変異陽性のがん患者を対象に、ビタミンDサプリメントの再発や死亡抑制効果を検証しています。
さらに、同大学の別の研究では、東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に血中ビタミンD濃度を測定したところ、98%の人がビタミンD不足または欠乏状態であることが明らかになりました。この結果は、日本人のビタミンD不足が深刻であることを示しており、骨粗鬆症や感染症、心血管疾患などのリスク増加が懸念されています。

一般社団法人日本スポーツ栄養協会公式情報サイトによると、ビタミンDは、骨の健康維持だけでなく、免疫機能の調節や細胞の増殖抑制など、多岐にわたる生理作用を持っています。そのため、適切なビタミンDの摂取は、がんの予防や再発リスクの低減、さらには全身の健康維持に重要と考えられます。
ビタミンDは、骨の健康や免疫機能の向上、気分の改善に効果があることで知られています。新たな研究によると、脳の健康もそのリストに加えられる可能性が出てきました。ビタミンDのサプリメントが認知症のリスクを40%低下させる可能性も出てきたと述べています。
また学術誌「アルツハイマー病と認知症」診断、評価、疾患モニタリング(アルツハイマーと認知症:診断、評価、および疾患モニタリング)」に掲載された研究では、特に正常な認知機能を持ち、アルツハイマー病の遺伝的リスクを持たない人々に関して、ビタミンDのサプリメントに保護効果が見られました。
ビタミンDの健康効果に関する最新の研究

最新の研究では、ビタミンDは、骨の健康維持だけでなく、さまざまな健康効果が報告されています。様々な論文でビタミンDの適切な摂取が健康に関連していることが示唆されています。

免疫システムへの影響

T細胞やB細胞などの免疫細胞がビタミンD受容体を持っていることがわかり、適切なビタミンDレベルが自己免疫疾患の予防や感染症への抵抗力向上に重要な役割が考えられました。

健康とメンタル関連

脳内にもビタミンD受容体が存在することが確認され、セロトニンの産生調節の安定することが明らかになりました。

筋力・運動機能への効果

高齢者を対象とした研究で、適切なビタミンDレベルの維持が筋力低下を防ぎ、転倒リスクを約30%軽減させることが示されました。

がん予防との関連

特に大腸がんについて、ビタミンD濃度が高い人ほど発症リスクが低いという疫学データが検討されています。

代謝への影響

インスリン感受性の改善、糖尿病の予防や管理に関心を抱く可能性が示されています。

これらの効果を得るためには、血中ビタミンD濃度を適切なレベル(30-50ng/mL)に維持することが必要があると言われています。 

日本人の多くが不足状態にある中、特に室内で過ごす時間が長い現代のライフスタイルでは、意識的な摂取が必要でしょう。
ビタミンDを適切に摂取するためには適度な日光浴が大切です。紫外線(UVB)を浴びることで皮膚はビタミンDを合成します。適切な日光浴の時間は、地域や季節によって異なりますが、夏場であれば1日15〜30分程度、冬場はより長い時間が必要です。
食事からの摂取もまた重要でビタミン Dが多く含まれる食品には、脂肪の多い魚(サーモン、マグロ、イワシ)、卵黄、きのこ(特に日光に当てたもの)などがあります。
日光浴と食事だけで十分なビタミンDを摂取するのは難しい時はサプリメントを活用して、ビタミンDを補いたいものです。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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