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多様化する健康ニーズに対応した商品展開が進む『ウエルネス飲料』


総合マーケティングビジネスの富士経済は、商品パッケージやブランドサイトなどで、メンタルやフィジカルの健康に良い効果があると訴求している飲料を『ウエルネス飲料』と定義し、国内市場を調査し、その結果を公表しました。

調査では、ウエルネス飲料を成分付加型(乳酸菌やビタミン、カルシウム、食物繊維、カテキンなどの成分を添加した飲料)、オフゼロ型(カロリーや糖類、カフェインなど特定成分を低減した飲料)、素材訴求型(カテキンやポリフェノール、クエン酸といった原料に含まれる成分を訴求した飲料)とに分け、市場を分析しています。また、ウエルネス飲料のうち、注目度が高い美容・インナービューティー、ストレス緩和・睡眠サポート、リフレッシュ、リラックス、栄養補給ドリンクを「NEXT健康飲料」と定義して調査を行いました。

■ウエルネス飲料市場動向

2020年見込 2025年予測 2022年見込比
成分付加型 6,824億円 7,149億円 104.8%
オフゼロ型 3,495億円 3,569億円 102.1%
素材訴求型 1,540億円 1,642億円 106.6%
合 計 1兆1,859億円 1兆2,360億円 104.2%

ウエルネス飲料市場は、2020年に前年を下回りましたが、2021年は新型コロナウイルス感染症の流行や、それに伴う生活環境の変化で、免疫維持やストレス緩和などを訴求した商品の需要が高まり、そのことが購入につながったことから、コロナ禍前の2019年を上回っており、2022年の市場も引き続き拡大が予想されます。

また、外出機会の減少で止渇目的の飲料の購入が減り、飲料メーカーは健康を目的とした商品の展開を強化している傾向が見られ、今後も多様化する健康ニーズに対応したウエルネス飲料は増えて行くことが予想され、2025年の市場は2022年見込比4.2%増の1兆2,360億円となる見込みと予測しています。

成分付加型は、乳酸菌やビタミン、カルシウム、食物繊維、カテキンなどの成分を添加した商品を対象としています。マスク着用や外出自粛など生活環境の変化で、美容や睡眠などに対する新たな課題が顕在化しています。特に肌荒れやカラダづくりに対する意識の高まりで、ビタミンやタンパク質、コラーゲンといった美容系成分を添加した商品が伸びているため、市場は拡大しています。
また、整腸作用や免疫維持を目的に摂取されてきた乳酸菌で、新たにストレス緩和を訴求する商品が展開されるなど、フィジカルだけでなくメンタルに対する健康訴求も進むことから、2025年の市場は2022年見込比4.8%増と予測しています。

オフゼロ型は、カロリーや糖類、カフェインなど特定成分を低減した商品を対象としています。現在は食事中にも飲用しやすい無糖茶や無糖炭酸飲料が主体ですが、消費者の安心・安全意識の向上で、無添加やノンカフェインなど元から余分な成分が入っていない商品が伸びており、2022年の市場は3,495億円が見込まれます。
無糖が嗜好的な飲料の罪悪感軽減に繋がっているため、今後は食事中や止渇性以外の飲用シーンが広がり、需要増加が予想されます。また、余分な成分を含まない飲料による健康維持が注目されていることから、2025年の市場は2022年見込比2.1%増となる見通しです。

素材訴求型は、原料に含まれる成分を訴求した商品を対象としています。カテキンやポリフェノール、クエン酸といった健康・美容イメージが想起される成分を訴求した商品が伸長しており、2018年から市場は拡大し続けています。今後は生鮮食品で代替可能な素材については、中食の広がりもあり、競合が懸念されるため、リコピンやビタミンなどを含む商品は頭打ちになるとみられます。
一方、飲料以外の効率摂取が難しいカテキンやクエン酸などの成分を含んだ商品は伸長傾向で、市場の拡大が予想されます。

「NEXT健康飲料」市場は日常的な飲用や日配売場での展開が進む

■美容・インナービューティー「NEXT健康飲料」市場動向

2020年見込 2025年予測 2022年見込比
1,068億円 1,205億円 112.8%

素材やたんぱく質訴求などにより、美容や体づくりに役立つことをアピールする飲料を対象としています。乳飲料やビネガードリンク、果実飲料、ドリンクヨーグルトなどのチルド商品が市場の半分以上を占めています。
新型コロナ流行の影響で、体の内側から美を求める需要が高まっており、様々な美容ニーズに対応するため、訴求する素材や成分も多様化しながら商品が増えている傾向が見られます。外出先、イエナカを問わず、飲用シーンが広がっており、サイズ別ではパーソナルとホームユースともに好調です。

美容ライト層向けでもビネガーやレモン、豆乳といった素材を訴求する商品は日常的な飲用需要を獲得しているため、2022年の市場は1,068億円が見込まれます。
メインターゲットが感度の高い女性であるため、ヘビーユーザーになることが期待されるほか、飲み切り・イエナカのニーズによって様々な容器サイズが好調のため、市場の拡大が予想されます。
また、主にチルド飲料メーカーが、女性の立ち寄る頻度の高い日配売場などのドライ飲料以外の売場で展開を進めていることから、2025年の市場は2022年見込比12.8%増と予測しています。

■リフレッシュ「NEXT健康飲料」市場動向

2020年見込 2025年予測 2022年見込比
2,093億円 2,391億円 114.2%

刺激によるリフレッシュや気分高揚を訴求する炭酸飲料やエナジードリンクなどを対象としています。若年層はエナジードリンク、20代〜30代は無糖炭酸の飲用が多く、幅広い層で需要が高まっています。

飲料メーカーは、まとめ買いや弁当惣菜とのセットでエナジードリンクの販売を強化しています。無糖炭酸飲料は食中やアルコールの代替、割材として提案がなされ、イエナカでの日常的な飲用が進んでいるため、新型コロナ流行前から市場は拡大し続けています。
リフレッシュ効果は体感できることが重要であり、今後はメンタル面に加えて、飲み応えや嗜好性など、各消費者が体感や満足できる健康飲料として展開が進むことが予想され、2025年の市場は2022年見込比14.2%増となる見込です。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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