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紅麹問題の影響で健康市場は縮小するも回復傾向でコロナ禍前の高い水準へ

紅麹

矢野経済研究所は、国内の健康食品市場、機能性表示食品市場を調査し、各セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにしました。

2023年度の健康食品国内市場規模(メーカー出荷金額ベース)は9,050億2,000万円、2024年度(見込)の同市場は前年度比1.2%減の8,945億1,000万円と推計しています。
流通ルート別では、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行して外出機会の増加により、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどの店頭ルートの販売が大幅に伸長した一方、市場の牽引役であった通信販売が競合激化により2年度連続の縮小となったことに加え、海外市場が大きく減少しました。

2024年度は、2024年3月に発覚した紅麹問題が大きな逆風となり、健康食品市場は縮小に転じる傾向です。紅麹問題の対象商品がコレステロールを中心とする生活習慣病予防の機能性表示食品、打錠(錠剤)であったため、生活習慣病対策の錠剤やカプセル形状の健康食品や機能性表示食品に対して、消費者の摂取を止める動きや心象の悪化も一部で見られました。
一方で、粉末形状の機能性表示食品については大きな影響が見られず、剤型で大きく明暗が分かれています。
ただし、生活習慣病対策の健康食品(サプリメント)については、通信販売の定期購入で継続摂取する傾向も強く、定期購入からの離脱が一定規模見られたものの、健康食品メーカーへの信頼をもとに継続購入した消費者層も多く、紅麹問題による影響が軽微であった健康食品メーカーも多いと思われます。
紅麹問題は市場には逆風となったものの、影響は限定的であり、2024年度の健康食品市場はコロナ禍前の2019年度よりも高い水準となる見込みと予想されます。(グラフ1)

グラフ

グラフ1

食品種類別の機能性表示食品市場は上昇傾向

2023年度の機能性表示食品の国内市場規模(メーカー出荷金額ベース)は6,813億1,000万円と成長基調を維持し、2024年度(見込)の同市場は前年度比6.4%増の7,251億2,000万円と推計しています。

食品種類別に機能性表示食品市場を見てみますと、2023年度まではサプリメント、一般食品(明らか食品)、生鮮食品ともに積極的な届出・展開が見られ、市場は高い成長を遂げています。紅麹問題の影響が大きかった2024年度は成長率が鈍化したものの、機能性表示食品市場は前年度比6.4%増と引き続き成長基調を維持する見込みです。
紅麹問題により逆風が吹いた錠剤やカプセル形状が含まれるサプリメント市場も前年度比7.6%増の見込みで、定期購入からの一定の離脱者が見られましたが、生活習慣病予防を目的とした飲用は継続摂取の傾向が強く、紅麹問題の影響は限定的であったと推察されます。
また、機能性表示食品全体に対する一般消費者の心象が悪化したとの指摘もありますが、一般食品形状の機能性表示食品に関しては、大手メーカーを中心に機能性表示を前面に押し出した積極的なプロモーションが見られます。機能性表示食品市場の成長率は低下は見込まれますが、これは2023年度までの積極的な商品展開による競合激化の影響が大きいと考えられます。

生鮮食品形状の機能性表示食品に関しては、生鮮食品特有の問題である作況や生産・収穫量の問題に起因し、売上が横ばいや減少にて推移した事業者が多いようです。特に生鮮食品は、近年、異常気象や災害の影響が大きく、機能性表示食品についてもその影響が見られます。

2025年度も紅麹問題の影響は残り、健康食品市場の本格的な回復には時間を要する見込みですが、その後、緩やかな回復基調を辿り、2029年度の健康食品国内市場規模は9,000億円を超える規模に達すると予測しています。

紅麹問題により摂取を中止した層の回復には時間を要すると見られますが、独自素材や製剤技術などに対する研究開発力や品質に対する信頼性の醸成により、顧客を維持・増加させている健康食品メーカーも存在します。
今後の健康食品市場では、マーケティング力に加え、企業に対する信頼性の醸成がブランド力を高め、消費者の購入意欲の喚起、商品へのロイヤリティの維持・向上に繋がる傾向が強まる傾向です。(グラフ2)

グラフ

グラフ2

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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