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緩やかな拡大傾向を維持する健康診断・人間ドッグ市場

医者

矢野経済研究所が国内の健診・人間ドック市場を調査し、市場概況、将来展望を明らかにしました。

法定健診には、地方自治体が実施する住民健診や、企業・団体等が従業員向けに実施する定期健診、母子健康法・学校保健法などに基づく健康診断、40歳以上74歳以下の公的医療保険加入者全員が受診する特定健康診査(以下、特定健診)、がん検診、後期高齢者向けの高齢者健診などが含まれます。その他、利用者が任意で受診する人間ドック等の任意健診も実施されており、本調査における健診・人間ドック市場はそのいずれも対象として算出されています。
健診施設では、受診者受け入れ拡大のため、他施設との差別化ポイントの1つとして受診者のニーズに対応した人間ドックのオプション検査を導入することで、受診者の獲得を図っています。本調査に関連し、2025年7~9月に健診実施施設に対して郵送アンケート調査を実施し、115件の回答を得ています。

人間ドック標準検査以外のオプション検査として実施件数の多い検査項目(複数回答)について尋ねたところ、「PSA(前立腺特異抗原)検査」の回答が最も多く、次いで腫瘍マーカーである「CEA」、「CA19-9」と続いています。その他、上部消化管内視鏡検査、他の腫瘍マーカーや婦人科領域、脳神経領域の検査も比較的多い傾向がみられます。
新しいオプション検査項目としては、がんや脳梗塞・心筋梗塞、認知症などの発症リスクを評価するリスク評価系検査サービスが広がっています。近年ではAIを用いた解析サービスが注目され、心電図データや過去の健診結果を解析することで、将来の健康状態をシミュレーションする検査も登場しています。また、今後注力していきたい分野を尋ねた質問では、「人間ドック」という回答が多く挙げられ、引き続き人間ドックが注目される分野・市場であることが示唆される結果となっています。(グラフ1)

グラフ

グラフ1

2024年度の国内健診・人間ドック市場(受診金額ベース)は9,680億円、前年度比101.6%と推計しています。コロナ禍で一時的に受診者が減少したものの、2022年度以降は予約・受診者数が正常化し、市場は回復基調にあります。個人の健康投資意識の回復や、健診施設の運営体制の再構築が進み、市場は安定成長局面に入ったと考えられると言えます。
今後は、健康寿命延伸や生活習慣病予防を目的とした政策の推進や、企業・健保・自治体の連携強化により、受診率は緩やかに上昇していく見通しです。健診対象人口の減少は避けられないものの、受診率の向上と付加価値型サービスの拡充により、国内健診・人間ドック市場は緩やかな拡大を維持すると予測しています。(グラフ2)

グラフ

グラフ2

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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