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約4年ぶりの『行動制限がないノーマスクの夏』、約7割の医師が賛成と回答


2023年5月8日、新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」に移行されたことにより、政府から一律に日常における基本的感染対策や、感染症法に基づく新型コロナ陽性者及び濃厚接触者の外出自粛は求められなくなりました。
また、限られた医療機関でのみ可能であった受診が、幅広い医療機関において可能になったことで(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」より)約4年ぶりの『行動制限がないノーマスクの夏』を迎えることになりますが、このことについて、現場の医師はどのように感じているのか。

医療人材総合サービスを提供するエムステージ(東京都品川区、杉田雄二社長)は、同社が運営する「Dr.転職なび」「Dr.アルなび」に登録している医師のうち432名に、『行動制限がないノーマスクの夏』についてWEBアンケート調査を実施し、その結果を公表しました。

『行動制限がないノーマスクの夏』・・・医師の7割が賛成

「行動制限がないノーマスクの夏」に対し、26.4%の医師が「大いに賛成である」と回答。また、41.0%が「どちらかというと賛成である」と回答し、約7割の医師が賛成する結果となっています。
賛成の理由としては、マスク着用による熱中症や脱水症を危惧する意見が多くみられ、反対の意見としては、ゴールデンウィークを経て、改めて対策をするべきという意見がみられました。(グラフ1)

大いに賛成であると回答した理由(フリー回答)として、いままでがつらかった(60代/産婦人科/勤務医[診療所・クリニック])、もともとそれほどマスクに賛成ではない(30代/呼吸器外科/勤務医[大学病院])、熱中症になる危険性があるため(50代/リハビリテーション科/勤務医[大学病院以外の病院])などが上がっています。

どちらかと言えば賛成であると回答した理由(フリー回答)では、脱水症のリスクを考慮すると、外すことをベースにして良いと思う(70代以上/一般内科/勤務医[診療所・クリニック])、コロナ感染をコントロールすること自体がもはや難しそうであることや、一人ひとりにコロナに対する意識が醸成されるには十分な時間が経過しており、以降は個々の判断に委ねても良いと思われるため(40代/一般内科/勤務医[大学病院以外の病院])、ノーマスクという言葉が先行して、それぞれの環境に合わせて着用をする事は忘れないで欲しい(30代/産業医)、熱中症対策にもマスクを外した方が良い(50代/整形外科/勤務医[診療所・クリニック])という意見などがあげられています。

これに対し、どちらかと言えば反対であると回答した理由(フリー回答)では、外来にて、ゴールデンウィークから発熱患者のコロナ陽性率が急増しており、次の波が既に始まっている感覚を受けるため(30代/リウマチ科/勤務医[非常勤のみ])、現実問題、連休明けから患者が増加している(60代/一般内科/勤務医[診療所・クリニック])、マスクで予防できるのはコロナだけではないため(50代/形成外科/勤務医[診療所・クリニック])、換気が不十分なクーラーのきいた室内では、クラスターが起こるのでは(40代/消化器内科/勤務医[健診施設や老健など])、医療機関では、いまだコロナ感染の治療をされている患者さんが多いです。このようにならないよう、引き続き注意していく必要があると思います(50代/眼科/勤務医[大学病院])などの声が上がりました。
また、大いに反対であると回答した理由(フリー回答)では、感染者数が明らかに増加している一方、感染症病床は減っている(40代/救急科/フリーランス)、また新しい感染症が流行した場合に、大騒ぎになることが予想されるから。標準予防策としてマスクはしたほうがいいと思う(40代/整形外科/勤務医[診療所・クリニック])といった意見もありました。

マスク着用が必要と思われるシチュエーション

「行動制限がないノーマスクの夏」であっても、マスクを外さない方が良いと思うシチュエーションは、「病院、クリニックなどの医療機関」(365)の回答が最も多く、「特養などの高齢者施設」(312)、「電車、バス、飛行機などの公共交通機関」(196)、「声出し可のコンサート・ライブ会場、スポーツ観戦、観劇などのイベント」(99)や「会社、学校、保育園、幼稚園など日常的に集団で過ごす場所」(96)などをマスク着用が必要なシチュエーションとして回答する医師は3割を切る結果でした。(グラフ2)

夏休み期間中などの旅行や規制については約9割の医師が問題ないと回答

移動が活発になることが予想される夏休み期間中などの旅行や帰省について、「対策なしであっても問題ない」と回答した医師は21.3%、「適切な対策を実施すれば問題ない」と回答した医師は66.7%となり、約9割の医師が問題ないと回答しています。(グラフ3)

また、「適切な対策」としては、「マスク着用が効果的である場面でのマスク着用」(233)、「手洗い」(229)、「換気」(217)など基本的な対策以外に「大声で話さない」(50代/脳神経内科/勤務医[診療所・クリニック])や、「コロナワクチン接種」(50代/耳鼻いんこう科/勤務医[診療所・クリニック])などの回答がありました。(グラフ4)

長く続いた自粛生活により体力や抵抗力が低下傾向のため疾患・症状に要注意

約4年ぶりに行動制限がなくなる今年の夏に、患者数が増えると思う疾患・症状について聞いたところ、「新型コロナウイルス」(305)、「夏風邪」(305)が同数で最も多く、次いで「熱中症」(120)、「海水浴やプールなどでの水の事故」(112)、「夏バテ」(72)となっています。その理由として、「反動ではしゃぎすぎる。自粛生活で基礎的な体力・抵抗力が落ちているだろうから。」(60代/精神科/勤務医[大学病院以外の病院])、「色々な制限があった環境下で、体力や感染症に対する抵抗力が落ちてしまっていることが影響すると思う。」(60代/健診・ドック/勤務医[健診施設や老健など])など、長く続いた自粛生活による、体力や抵抗力の低下を懸念する回答が目立ちました。(グラフ5)

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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