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「睡眠」「整腸」「免疫」の3訴求で保健機能食品の機能性訴求実証試験


日本の健康食品市場の流通販路は70%が通信販売などの無店舗販売です。
一方、サプリメント大国アメリカでのサプリメント市場の70%はリテール流通で、アメリカと日本とは全く逆の流通構成となっています。しかし、どちらの国でもサプリメントのリテール販売の中心はドラッグストアやスーパーマーケットです。

アメリカでは1994年に通称「サプリメント法」と言われるDSHEA法(Dietary Supplement Health and Education Act)が制定されており、事後の簡単な届出でヘルスクレームが可能となっています。そのため、ほとんどのサプリメントのラベルにはそれぞれの機能性が表示されており、店頭では機能別の棚に商品が陳列されていることが多く、消費者はどのサプリメントがどんな機能性を持っているのかが一目瞭然で分かる様になっています。販売されているサプリメントのほぼ全てが機能性表示食品というわけです。

さらに、ドラッグストア内では薬剤師がOTC医薬品とサプリメントを同じステージでアドバイスに応じることも日常的です。例えば、かぜの初期症状と思われる顧客の相談では「その症状であれば、かぜ薬を使う前にまずサプリメントの『エキナシア(かぜやインフルエンザの予防にいいとされる代表的なハーブサプリメントの1つ)』を試してみてはいかがですか?」といったような感じです。

日本の多くのチェーンドラッグストア企業が加盟するのが一般社団法人の日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)で、加盟企業の総店舗数は2万店を超えます。ドラッグストア市場はすでに8兆5408億円(2021年度)となっており、2025年度までに市場規模10兆円を目指しています。

JACDSでは2010年頃からヘルスケアやセルフメディケーションを業界全体の「Show the Flag」とし、「食と健康」をその中核に据えて機能性表示食品やトクホなど食の機能性の普及・啓発に尽力しています。ちなみに、機能性表示食品制度誕生後に消費者庁が設置した「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」にも、リテール代表として委員を参画させています。

日本では、食品を販売する際に保健機能食品(機能性表示食品やトクホなど)以外はその健康効果を直接表示することはできません。また、その健康効果を間接的に表現しようとしても薬機法や健康増進法、景品表示法などの関連法律が複雑に関与しており、どこまで表現ができるかの判断が難しいのです。
さらに、その法解釈や指導が自治体や保健所によってもまちまちで全く統一されていません。機能性表示食品やトクホでさえも、POPや棚割り次第では指導が入るのが現状です。

これらの問題を将来に向けて解決すべく、JACDSでは2017年と2019年に2回にわたって「食と健康の実証試験」と題して、保健機能食品を中心に身体への健康効果を売りにしている健康食品を集めた棚を実験的に作り、販売促進と消費者への情報提供のトライアル実験を行いました。
その結果、「やはり機能別の棚を作った方が分かりやすい」といった声を拾うことはできました。しかし、試験期間が短かったこともあって目に見えるような売上増加の効果は得られませんでした。
さらに、「機能性表示食品やトクホ」と「いわゆる健康食品」、さらに「一般食品」が混在するドラッグストアの健康食品売り場で、POP表示の範疇を明確に区別することや、管理栄養士、薬剤師、登録販売者などの情報提供者の役割分担も難しく、明確な道筋を示すまでには至っていません。

そこでJACDSは、2022年3月から全国6社16店舗で3回目の「実証試験」をスタートさせました。今回の実証試験では過去2回の反省も踏まえて、対象は機能性表示食品とトクホに絞り込み、機能も「免疫」、「腸内環境」、「睡眠」の3つだけにしています。
さらに実施期間も約2カ月間と長くし、事前に消費者庁、厚生労働省とも半年をかけて入念な打ち合わせを行った上で「自主運営マニュアル」を作成し、これに基づいた棚割りとポップを使った実証試験が行われています。

この実証試験の結果は2022年8月に東京ビックサイトで開催される「第22回JAPANドラッグストアショー」で発表される予定です。店頭での販売ではコミュニケーションが生まれやすく、これが情報提供の強力なツールとなるため、機能性表示食品の普及にはリテール販売の拡大が大きなカギとなる可能性があります。今回の実証試験の結果を待ちたいところです。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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