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機能性表示食品の「届出0日受理」 2022年度中に実現に向け動きが本格化


機能性表示食品の届出総数は、2022年6月1日時点で5528件(撤回を引いた実数は4899件)。
30年間で許認可数1061件(2022年4月22日現在)の特定保健用食品(トクホ)と比較すると、単純計算で実に20倍以上のスピードです。市場規模も拡大しており、矢野経済研究所の試算では2020年度において3,044億円、2021年度は3,278億円と見込まれ、新たな機能成分の探索や機能表示に向けた企業や研究機関の研究が活発に進んでいます。

この機能性表示食品制度の特徴の1つは、制度スタート以来毎年のように修正や改良を重ねてきていること。ガイドラインはこれまでに9回、2018年に新設された質疑応答集(Q&A)もすでに9回の改訂が行われています。そして今年、さらに新たな制度改正に向けての取り組みが始まっています。それが「届出0日受理」の実現に向けた動きです。

機能性表示食品は国が審査を行わないため、迅速な製品化が期待できるというのが1つのポイント。事実、最初の届出として2015年4月17日に消費者庁から公表されたものは、4月13日付受理の4製品と15日付受理の4製品、合計8製品でした。つまり届出書類が消費者庁に到着してから13日~15日で受理されたことになります。
しかしその後、届出数が加速度的に増えるにつれ、消費者庁の確認作業はずるずると遅れはじめ、1年後には届出から100日を超えても消費者庁から何の返事も来ないという事態にまで陥りました。

そこで、業界主要団体の要請を受けた形で当時の規制改革会議が動きました。2019年7月1日には「届出に不備がない場合、消費者庁に届出資料が提出された日から50日を超えない期間に公表することを目標とする。なお、届出に不備がある場合は、同様の期間に差し戻しを行うことを目標としている。再届出の場合は30日を超えない期間に公表する」とされました。さらに、2021年8月4日にはQ&Aも一部改正され、指定2団体のチェックが済んでいるものはその期間が30日に短縮されるということになりました。

民間の活力を生かした事前確認制度の確立へ

2022年1月21日に日健栄協がオンライン形式で開催した「特定保健用食品制度30周年記念講演会」の中で、消費者庁長官は「消費者庁の食品表示企画課が担当する機能性表示食品の届出資料の確認作業が大変な状況になっている」と窮状を訴え「業界の皆さんに協力いただき、民間の活力を生かし事前確認についてご協力いただくような仕組みをぜひ作りたい」と述べました。

2022年3月2日には「機能性表示食品の届出事前確認に関する連絡協議会」の開催が消費者庁から公表されました。機能性表示食品の届出確認業務の合理化・円滑化を図るために、関係団体と届出事前確認の仕組み構築の具体化に向けて検討するのが目的だ。前出の日健栄協と抗加齢協会以外に、公益社団法人の日本通信販売協会(JADMA)と一般社団法人の健康食品産業協議会(産業協議会)を加えた4団体が、関連団体として連絡協議会に加わりました。これまで全て非公開で、3月7日の第1回目から複数回の協議会が開催されています。

この民間団体による届出事前確認の仕組みの基本的な骨組みは、「公表実績のある機能性表示食品のみを対象として、当該団体の確認を経た届出は最終的に消費者庁における届出確認期間0日を目指す」ことになります。一方で、公表実績のない新たな機能性表示の届出は、今まで通り消費者庁に直接届出を行う方向で検討が進んでおり、どちらにしても最終的に消費者庁が引き続き全ての届出の公表・管理を実施することには変わりはありません。また従来通り、関係団体の事前確認を経ずに消費者庁に直接届出を行うことも可能です。

今後は、実施に当たって必要となる体制や実務的な手順書等の案を取りまとめ、一定の試行期間を経て2022年度中に仕組みの運用開始を目指すとしています。この運用がスムーズに行われるようになると、機能性表示食品の届出数の増加はさらに加速する可能性が高くなります。2021年度の届出数は1417件でしたが、あと数年で届出の合計が1万件を突破することも現実味を帯びてきました。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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