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炭酸が美肌を育てる


コスメマニアが最後に辿り着くのは炭酸美容と言われています。以前は炭酸美容といえばパックが主流でしたが、最近では様々なタイプの炭酸コスメが出ています。炭酸コスメの魅力は、何といっても効果を感じやすく、かつ即効性があること。炭酸を使った化粧品を一度使うと止められなくなるという女性が多いのもうなずけます。そこで、なぜ炭酸がお肌に良いのか?医師の見解を交えながらご紹介していきます。

炭酸の美容効果は、医学的に効果が実証されています!

もともと炭酸は医学的な治療として長い歴史があります。中でもヨーロッパでは、古くより炭酸泉への入浴が医療行為として行われてきました。炭酸の体への効能は、健康や美容効果に古くより活用されているのです。日本でも、以前からやけどや皮膚潰瘍の治療に炭酸が役立てられていました。新しいようでいて、実は長く使われている炭酸の美容・健康の効果。なぜ炭酸が身体に良い影響をもたらすのか、炭酸の知られざる働きについて、山本メディカルの齋藤真理子先生に解説していただきました。

新しいようでいて、実は歴史のある炭酸療法


数年前から炭酸美容がブームのようですが、私は「炭酸は医療の領域」という意識の方が強いですね。傷の修復やニキビ、アトピーの治療例に関しては枚挙にいとまがなく、歴史もまた古く、最初に壊血病の民間療法として炭酸が利用されたのは1770年という説もあるほどです。美容医療としても皮下に直接炭酸ガスを注入して、色素沈着やシワを改善するメソセラピーの効果に関して、数多くの論文が発表されています。

新しいようでいて、実は歴史のある「炭酸療法」ですが、なぜこれまで注目されてこなかったのでしょうか?
これは私個人の見解ですが、効率的に経皮吸収させる技術がなかったからなのではないかと考えています。メソセラピーは大掛かりな機械が必要でコストがかかり、皮膚疾患の治療の場合、人手と手間がかかってしまうため、あまり積極的になれなかったというところではないでしょうか。ですが、この数年で技術革新が大幅に進み、炭酸の経皮吸収がたやすくなったことから、ブームに火がついたかもしれません。世の中には、様々な健康法・美容法がありますが中には眉をひそめたくなるようなものもあります。民間療法の中にも、むしろ健康被害を及ぼすのではないかと思われるものも存在しています。私が「炭酸」を治療に積極的に取り入れているのは、長い歴史の中でその有用性が証明され、なおかつエビデンスの多さゆえのこと。今、世界の医学会はホリスティックを再評価しはじめています。身体の生理的作用を利用した「炭酸」は副作用がなく、安全で安心な「代替療法」として今後は美容や医療の主流になっていく気がします。

炭酸は傷を修復する


炭酸が血管に入るとヘモグロビンから酸素を切り離し、酸素を細胞に送り込むのですが、その際血管は一時的に酸素不足となります。すると酸素不足を感知した身体は、慌てて血液を送り込むという仕組みをボーア効果と言いますが、このボーア効果が患部に血液と酸素を送り届け、結果として免疫が活性化し修復を促すのです。言ってみれば、炭酸が傷を治すのではなく、炭酸を利用して治る身体に変える、ナチュラル治療法なのです。
血流の障害によって起るトラブルは皮膚疾患だけではありません。血液の主な役割は、栄養分や酸素を体内各所の細胞に届けること。同時に、体内で発生した老廃物や二酸化炭素を回収し、腎臓や肝臓に運ぶ役割も担っています。
血流が滞るということは、細胞や臓器に栄養が行き渡らなくなり、老廃物が長時間体内にとどまることになります。この状態が長く続けば、やがて動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクが高まってしまうのです。さらには健康面だけでなく、美容面でも新陳代謝の低下によりシミやシワ、くすみ、乾燥などの肌老化をまねく原因にも。血の巡りを良くして、末端まで酸素と血液を送り込むことがいかに重要か、おわかりいただけたでしょうか。

炭酸がもたらす3つの効果

1 血管拡張・血流改善

炭酸が身体に及ぼす効果は様々ありますが、重要なポイントとして血管の拡張・血流の促進・酸素量を増やすことにあるでしょう。この3つの働きによる美容・抗加齢効果、そして全身的な健康増進が期待できるのです。
炭酸の素晴らしい点は、あらゆる生物が持っているホメオスタシス(生体機能)を利用し、内服薬を使わずに血管拡張作用を期待できる点にあります。
その皮膚における作用を簡単に説明すると、炭酸ガスが皮膚から吸収され血管に取り込まれると、炭酸脱水酵素の作用により重炭酸イオンと水素イオンに変換されます。水素イオンが発生すると、組織が酸性に傾きpHが下がります。すると、この変化を受けた血管内皮細胞が血管壁の緊張を緩める物質を産出し、血管が拡張するのです。これを血管壁のpHセオリーと言い、血流や血圧を調整する生体機能の一つです。

2 血流が上がって酸素量を増やす

炭酸が吸収された部位は血管拡張効果により血流が高まります。血流が活発であれば、肌細胞は不要な老廃物を溜めることなくどんどん排出することができます。その分、酸素や栄養分が取り込めて細胞は活性化します。炭酸で血管が拡張し、血流量が増えるということは、【酸素が増えて細胞が活性化し、新陳代謝が良くなる】ことにもつながります。

3 炭酸によるボーア効果

ボーア効果とは、血液内の二酸化炭素量や温度の変化で、赤血球から放出される酸素の量が変化する効果のことです。炭酸ケアは、まさにこのボーア効果を利用したものです。酸素は通常ヘモグロビンという血液中の色素細胞とくっついています。炭酸ガスを直接皮膚から高濃度に吸収すると、炭酸脱水酵素の働きでpHが下がります。するとボーア効果により、赤血球からさらに多くの酸素が放出されるようになり、結果として炭酸ケアを行った皮膚にはより多くの酸素が供給されるという仕組みです。
また新陳代謝とは、例えば肌であれば、細胞を新しくつくり、古いものと取り換える働きのことです。角層に古くなった表皮細胞が残ったままで排出できないと、新しいものと入れ替わることができません。それが、シワシワの乾ききったゴワゴワどす黒い肌の要因となります。代謝を上げる方法として、大切なのは酸素を十分取り込むこと。これにより肌の細胞分裂、すなわちターンオーバーに必要なエネルギーが供給され、健康で美しい肌を維持していくことが可能となります。

以上のように、つねに新鮮な血液が滞りなく循環することで、細胞に栄養をたっぷり与えられ、皮膚の傷やケガだけでなく、全身の健康管理につながります。美容面に限らず炭酸が健康維持や病気の予防に役立つというのは、pHセオリーやボーア効果を利用した炭酸ガスの有益な効果によるものです。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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