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短鎖脂肪酸を多く生み出すビフィズス菌とイヌリンによる「認知機能」の改善効果を確認


江崎グリコは短鎖脂肪酸を多く生み出す、同社独自のビフィズス菌と水溶性食物繊維イヌリンによる認知機能の改善効果を確認し、その研究結果が2023年9月27日に国際科学雑誌「Nutrients」に掲載されました。

同社の研究背景として、現在日本には600 万人以上の認知症患者がいるとされ、これはおよそ20人に1人にあたる計算です。さらに世界には現在5,500万人の患者がおり、2030年には7,800 万人、2050年には1億3,900 万人にまで増加すると推定されています。このように認知症は世界的な社会課題であり、解決策が常に求められています。

認知症の大多数はアルツハイマー病(AD)であり、脳細胞の減少によって脳が萎縮することで引き起こされます。ADは一度発症すると症状を改善させることが困難な病気で、現在のAD治療薬では病態の進行を遅らせることしかできないため、未だ根本的な治療法はありません。そのため、対策としては発症する前の予防がとても重要です。ADの前段階にあたる状態として軽度認知障害(MCI)という状態がありますが、MCIは正常な状態と認知症の中間の状態で、MCIであれば正常状態に回復することが可能だと言われています。そのため、普段の生活の中でMCIから回復させる方法、さらにはMCIになることを防ぎ、AD患者を増やさない対策 が求められています。

ADは肥満など身体の炎症と深い関係があることが最近の研究などでわかってきました。肥満や炎症を抑えることでADの進行を抑えることが期待されており、同社独自のビフィズス菌であるGCL2505株は、健康な成人から分離されたプロバイオティクス株で、これまでの研究により、内臓脂肪の低減効果が明らかにされています。また、GCL2505株は、ヒトの腸内にいる一般的なビフィズス菌と比べて短鎖脂肪酸を多く産生することも明らかになっています。その短鎖脂肪酸と炎症の関連性についても研究が進む中、同社ではGCL2505株とイヌリンによる認知機能への影響を確認する研究に着手しました。


今回の試験は物忘れの自覚がある、または他人から物忘れを指摘されたことのある健常な成人男女80名を対象に、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を行いました。
その結果、1日あたり100億個のGCL2505株と2gのイヌリンを12週間摂取した群(GCL2505群) は、プラセボ群と比較して、コグニトラックス検査における総合注意力、認知柔軟性、実行機能領域に加え、総合的な認知機能の評価に用いられる神経認知インデックス領域のスコアが有意に改善しました。またGCL2505群の糞便中のビフィズス菌数は、プラセボ群と比較して有意に高い値を示しました。 (図1・図2)

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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