来院患者数がコロナ禍前の水準に戻り市場規模は復調傾向に
矢野経済研究所は、国内の柔道整復・鍼灸・マッサージ市場を調査し、市場規模・動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにしました。
接骨院や鍼灸院、マッサージ院等で行われる施術は、いずれも国家資格者である施術者が行う医療類似行為(サービス)として位置づけられており、整形外科での医療行為や整体・カイロプラクテイックなど民間資格を持つ施術者による療法とは異なります。
国内の柔道整復・鍼灸・マッサージ市場は、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で接骨院・鍼灸院・マッサージ院いずれも来院患者数が減少し、2020年の同市場規模(事業者売上高ベース)は前年比94.6%の9,190億円となりました。2021年は患者数がほぼコロナ禍前の水準に戻ったことから、同市場は同105.3%の9,680億円と推計しました。
接骨院では、腰痛や頭痛、眼精疲労、肩こりなどの症状を訴える患者が増加しており、そうした症状に関する施術が増加しています。自宅では会社のデスク、イスとは高さが違っていたり、ダイニングテーブルなどで作業することが多く、普段と姿勢が変わっているのが原因と言われているようです。
鍼灸院では、メンタルの健康・予防を意識した自律神経に関する施術が増加しています。在宅勤務(テレワーク)やおうち時間(在宅時間)の増加に伴う急激な生活の変化で、多くの人がストレスを感じており、鍼灸院において自律神経を整える施術が増加しています。
自律神経とは交感神経と副交感神経という2つの神経の総称であり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうことを自律神経失調症といい、疲労や倦怠感、不眠、耳鳴り、息苦しさ、口の渇き、のどの詰まり、などの症状が出る。WHO(世界保健機関)は鍼灸適応疾患として、自律神経失調症などの神経系疾患に効果が認められるとしており、鍼灸院は、メンタルヘルスケアを全面に打ち出し、新たな患者層を獲得している傾向です。
国内の柔道整復・鍼灸・マッサージ市場は、引き続き治療院数、国家資格者数の増加による競合に加え、民間資格サロンや整形外科など周辺業種との競争が激しくなり、これまでと同じやり方、同じサービスの継続では立ち行かなくなる治療院が増える可能性もあります。
なお、テレワーク・在宅時間の増加による施術傾向が変化している他にも、美容を訴求した施術が増加する見込みで、治療院にとっては、美容施術を強化して女性を取り込むことにより、高齢者頼みになっている経営構造から脱却できると考えているようです。
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル