矢野経済研究所は、フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場を調査し、国内の参入企業の現況や動向、市場の課題と展望を明らかにしました。
2023年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場は、前年比108.0%の750億5,400万円と推計されています。フェムテックが唱えられはじめた2020年の前年比103.5%に比べると、市場拡大は勢いを増しています。
分野別に市場を見てみますと、当初成長が著しかった生理(月経)分野では2023年以降、事業の休止や撤退を表明する企業が出るなど、一部ではすでに一服感も出てきています。一方で、更年期ケアやセクシャルウェルネス分野への注目度は年々高まってきています。
更年期ケア分野は社会的にも大きな課題として認識されて来ており、サプリメントや漢方、情報提供等の支援サービスの活用が広がりをみせているだけでなく、男性の更年期症状に対する意識向上にも貢献している様子が見られます。また、セクシャルウェルネスにおいては最もタブー視されてきた分野であると言えますが、フェムテックの広がりにより少しずつオープンに話す土壌が築かれており、それに伴いアイテムやサービスにも広がりがみられます。市場のパイとしては大きくないものの、ここ数年は毎年2桁伸長を続けており、今後も注目のマーケットとなっています。
市場は「フェムテック」という言葉にとらわれない次のフェーズに
フェムテックアイテム・サービスへの参入事業者からは、業界と消費者の間にある温度差が指摘されています。中には『この1年で「フェムテック」というキーワードで売れる感覚が鈍化しているように感じている』というような声も聞かれ、あえて「フェムテック」というキーワードを、プロモーションから無くすような動きも少なくない状況がうかがえます。しかし、例え「フェムテック」という言葉が注目を集めることが少なくなっても、女性の健康課題を社会問題として考えられることが当たり前になり、それに伴ってフェムケア&フェムテックアイテムやサービスが、人々の生活に根付いていけば、自然と市場は拡大を続けていくと考えられます。高感度層におけるフェムテックアイテム・サービスの認知はすでに進んでいると考えますが、まだそうした商材の存在に気づいていない層は依然として多く存在しています。今後は「フェムテック」という言葉だけにとらわれず、あらゆる女性が “自分のためのもの” であることを理解できるための訴求が必要となってくるでしょう。
2024年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場は、前年比106.3%の798億200万円が見込まれます。伸長率こそ若干減少するものの、引き続き市場は大きく拡大していく見通しです。フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場にとって追い風になる動きとして、2023年に発表された女性の健康に特化したナショナルセンターの開設があります。
政府は女性活躍の推進や子育て支援の観点から、妊娠や出産などに伴う疾患について医療の提供や研究を行う国立成育医療研究センターに「女性の健康」に関するナショナルセンター機能を持たせるとしています。女性の健康に特化した同センターは、国内の研究データや成果の共有による開発の進展だけではなく、女性個人に向けた正しい情報提供や相談窓口の機能としても期待されており、フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場にとっても追い風になるものと考えられます。
健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル