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脂肪や睡眠に関するヘルスクレーム対策商品への需要が高く機能性表示食品市場の成長著しい


特定保健用食品と機能性表示食品の国内市場は機能性表示食品が有意な状況

総合マーケティングビジネスの富士経済は、脂肪やストレス、睡眠、免疫に関連するヘルスクレームがトレンドとなる中、商品数の増加や人気のヘルスクレームを掛け合わせたマルチヘルスクレームによる商品の差別化が進む保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)の市場動向を調査し、その結果を公表しました。同調査では、保健機能食品について訴求効能別、成分別、ヘルスクレーム別に分類し、最新の市場動向を捉えています。

堅調に伸びている機能性表示食品市場

機能性表示食品の2023年の市場は、新商品の発売や前年までに発売された商品のPR・販促活動の強化、価格改定によって、前年比19.3%増の6,865億円が見込まれていますが、明らか食品・ドリンク類が市場拡大をけん引している様相です。特に、前年に機能性表示食品としてリニューアルした「明治プロビオヨーグルトLG21」(明治)が好調であるため、明らか食品が伸びています。ドリンク類は、猛暑による止渇需要も獲得し、大きく伸長しています。

訴求効能別では、ドリンク類の新商品発売が前年から続いており、3割強を占める脂肪・コレステロール値改善が伸びています。続く睡眠サポートは、「Yakult1000」、「Y1000」(ヤクルト本社)の発売以降急伸しており、商品数の増加とともに伸びています。

成分別では、乳酸菌が消費者からの認知度が高いことや、脂肪(低減)や免疫機能維持、睡眠、ストレス緩和など幅広い機能を表示できることから伸長しています。同様に表示できる機能が多いことでGABAも好調。また、脂肪(低減)をヘルスクレームとする無糖茶飲料が女性の需要を取り込んでいることから、カテキンが伸びています。

今後も脂肪や睡眠に関する商品の需要は高いとみられ、2024年の市場は、2022年比27.7%増の7,350億円と予測しています。

機能性表示食品市場の伸長に反して特定保健用食品市場は低迷化

特定保健用食品は2019年以降、機能性表示食品の商品数増加が続いており、ヒット商品も登場していることから、需要が流出しているため、市場は縮小が続いています。2023年の市場は前年比4.4%減となる見込です。その背景には、機能性表示食品において表示できるヘルスクレームが多様化しているのに対し、特定保健用食品では表示できる機能が少なく、また、商品化までに時間やコストがかかることが考えられます。今後も新商品の発売は限定的とみられるため、2024年の市場は、2022年比6.3%減と予測しています。

健康維持のための中心的訴求である「脂肪」対策商品への需要は大きい

脂肪に関するヘルスクレームでは、生活習慣病予防やダイエットに関連する機能として需要が高く、2023年は、サントリー食品インターナショナルやコカ・コーラシステムから大型ブランドが投入されたことで、脂肪(低減)が大きく伸びています。また、腸を整え脂肪を減らすというストーリーのわかりやすさとターゲットの広さから、「Lakubi Premium」(ニコリオ)をはじめとする脂肪(低減)と腸内環境を組み合わせたマルチヘルスクレームの機能性表示食品も需要を獲得しており、市場は前年比8.3%増の3,669億円が見込まれています。脂肪に関しては、健康維持のための中心的な訴求であることから、今後も脂肪対策の需要は高いとみられます。機能性表示食品では商品数増加による競合激化が懸念されるものの、活発な商品展開によって引き続き市場は拡大することが予想されます。

睡眠対策商品への需要も底堅くさらに拡大傾向

睡眠に関するヘルスクレームでは、「グリナ」(味の素)をはじめとした、機能性表示食品へとリニューアルした商品を中心に市場が形成されました。新型コロナウイルス感染症の流行によるライフスタイルの変化で、需要が活性化し機能性表示食品の届出が大幅に増加したほか、2022年に「Yakult1000」がヒットし、伸長してきました。
2023年は前年までのブームが収まりつつあるものの、消費者の睡眠への関心は高いです。「Yakult1000」のほか「届く強さの乳酸菌W」(アサヒ飲料)、「メンタルサポート ココカラケア」(アサヒグループ食品)など、腸内環境改善とストレス緩和を組み合わせたマルチヘルスクレームが好調であり、市場は急拡大が続いており、今後も、睡眠のヘルスクレームに対する需要は高いとみられるほか、新たなマルチヘルスクレームを探索する企業も増えており、新商品が発売されることにより、2024年も市場拡大が続くとみられます。

睡眠と腸内環境・ストレス緩和との組み合わせたマルチヘルスクレームで乳酸菌の拡大が続く

成分別でみてみますと乳酸菌は相変わらず好調で拡大傾向です。尚、同調査ではビフィズス菌は除外しています。
乳酸菌市場の2023年は、前年から続くブームによって睡眠関連商品が好調であるほか、前年12月に機能性表示食品へリニューアルし、胃の負担軽減をヘルスクレームとした「明治プロビオヨーグルトLG21」がストレスやプレッシャーを感じるビジネスパーソンを中心に需要を獲得し、市場は前年を超える伸びの様相となっています。
睡眠と腸内環境改善、ストレス緩和など睡眠を組み合わせたマルチヘルスクレームがトレンドであるほか、免疫機能維持をヘルスクレームとした新商品発売や機能性表示食品へのリニューアルが多くみられ、今後も市場は拡大が予想されます。

カテキンの認知度の高さと機能性表示食品との融合でカテキン関連市場は堅調

カテキン関連市場の2022年は、「伊右衛門 濃い味」(サントリー食品インターナショナル)が、茶カテキンを関与成分とした機能性表示食品としてリニューアル発売されました。脂肪(低減)機能を訴求しながら、カテキンの認知度の高さや緑茶の濃い味わいを背景に需要を獲得したことで、ドリンク類が伸びました。   
2023年は、「綾鷹 濃い緑茶」(コカ・コーラシステム)が、茶カテキンを含む機能性表示食品としてリニューアル発売され、前年に引き続きドリンク類の伸びによって市場は前年比18.4%増が見込まれます。
機能性表示食品のうち、脂肪(低減)を訴求するドリンク類やサプリメントが好調であり、これらの需要の増加によって、今後も市場拡大が予想されます。

GABA市場がチョコレートの発売で急成長

2016年〜2017年に「メンタルバランスチョコレートGABA」(江崎グリコ)などの新商品が発売され、GABA市場は急拡大しました。
血圧対策をヘルスクレームとした機能性表示食品の需要が堅調なほか、幅広い世代でストレス対策意識が高まっています。
2023年は、ストレス緩和と睡眠の組み合わせなど、ストレス緩和と他のヘルスクレームを掛け合わせたマルチヘルスクレーム商品が好調であるため、市場は前年比21.3%増の199億円が見込まれます。
今後は、疲労感軽減や睡眠を含むマルチヘルスクレーム商品の需要獲得によって市場は拡大するとみられ、また、血圧対策などを副次的な訴求とし、糖や脂肪の吸収抑制などを主訴求とする商品の伸長が予想される事から、2024年の市場は2022年比32.9%増と予測しています。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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