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口腔ケアの重要性 能登被災地で誤えん性肺炎が4倍


能登半島地震の被災地では断水の影響により、歯磨きや入れ歯の洗浄、うがいなどが不十分なことから、誤えん性肺炎が前年比の約4倍にもなったと報告されている。
実は災害関連死で最も多い死因は肺炎で、歯磨きなどの口腔ケアをしていないと口の中の菌が唾液と一緒に気管に入って、「誤えん性肺炎」を発症するおそれがあると歯科医師会が注意を呼びかけている。

実際、1995年1月に起こった阪神・淡路大震災では災害関連死の24.2%が肺炎によると報告されている。
2011年東日本大震災でも厚生労働省は「歯・口・入れ歯の清掃がおろそかになると誤えん性肺炎などの呼吸器感染症引き越しやすくなる」と口腔ケアの重要性について注意喚起を促している。
今回の能登半島地震に際しても、誤えん性肺炎を懸念した歯科医師らでつくる「日本災害歯科支援チーム(JDAT)」は被災地に入り、診療や口腔ケア物資の配布を行なっている。
地震発生から3カ月、JDATの活動が奏功し、口腔ケアの周知と理解は進んでいるというが、3月1日現在、一部地域では未だ断水が続いている状態。まだまだ誤えん性肺炎のリスクは高い。

水の要らない炭酸口腔ケア製品が被災地に


災害関連死の一つである誤えん性肺炎のリスクが指摘される中、株式会社東洋炭酸研究所はwe medical合同会社の要請を受け、能登半島地震の被災地に向けて、3月「デンタルスパ」を提供した。
健康をサポートする目的で活動しているwe medical合同会社は中崎恵美医師とピラティストレーナーの千葉絵美さんの二人が代表を務めている。
株式会社東洋炭酸研究所は炭酸に特化した化粧品、入浴剤、サプリメントなどを扱うメーカー。
同社製品の「デンタルスパ」は炭酸を利用した口腔ケア製品。口腔専門医や歯科医から「口の衛生と歯茎の健康が保てる」と高い評価を受けているサプリメントである。

パウダー状の内容物が唾液に反応して発泡し、口の中に広がった炭酸泡が歯の表面のみならず歯周ポケットや歯間、歯、舌の汚れの除去しながら、歯茎が引き締められる。
さらに殺菌・抗菌に優れたマステックハーブに口臭を防ぐラクトフェリン、保湿を促すポリグルタミン酸などが配合されている。
吉村 健太郎 歯学博士(昭和大学 歯学部 口腔解剖学 講師)はデンタルスパの有用性を次のように語っている。
「デンタルスパは炭酸ガスの発泡作用によって、口腔内の汚れを除去しやすくすると考えられます。厳密にはデンタルプラークは細菌を含むバイオフィルムでありブラッシングなどの機械的除去が必要ですが、歯面や粘膜表面に付着したプラーク以外のタンパク質、糖質、脂質などについては炭酸ガスの気泡による『汚れを浮かせる』効果が期待できます。

また、炭酸ガスは血管拡張作用を持つため、歯肉の血行を促進し歯周病予防の一助になりうると考えられます。デンタルスパは通常の口腔清掃に必要な水や歯ブラシを必要としないため、場所を選ばず使用することができます。このような商品は現在他になく、口腔ケアにおいて非常に有用な商品であると思います。」
この他にも、半田東クリニックではドライマウスのケアにデンタルスパを利用している。

虫歯が極端に少ない国の歯磨き方法


口腔ケアの需要性は被災地に限らない。日々のケアが歯周病や歯の喪失を予防する。また、近年では全身の健康維持にも効果が高いことがわかった。
歯周病は口の中の病気と捉えられるが、歯周病菌は増えると歯肉に炎症をきたすだけでなく、血液中に入ると菌が全身を巡り動脈硬化を引き起こす。心臓の動脈に効果が起これば、心筋梗塞に。脳の血管が詰まれば脳梗塞に。
さらに歯周病は糖尿病の合併症の一つと言われており、糖尿病の人は歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いというデータが報告されている。
このように全身症を引き起こす歯周病菌は酸素を苦手とする嫌気性の細菌で、歯と歯のすき間や歯と歯肉のすき間の歯周ポケットなどで増殖する。
歯周ポケットに棲みついた菌は、歯磨きだけでは除去しきれない。そこで、歯磨きプラスアルファの手入れが大切になってくる。
予防歯科の習慣が根付いている欧米では、子供の頃からデンタルフロスは当たり前。
オーラルケア先進国と言われ子供の虫歯が少ないことで知られるスウェーデンやフィンランド。これらの国の幼稚園、小学校は歯磨きに加えキシリトールなどのタブレットを食べさせている。
歯磨きの方法も独特で、歯磨き粉を口の中全体に行き渡るように口の中でブクブクさせた後吐き出して終わり。濯ぐがないのがスタンダード。
日本と比べ、虫歯が極端に少ないスウェーデンやフィンランドにおける口腔ケア。日本人も、災害時だけでなく口腔ケアに関して再考する時期に来ているのかもしれない。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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