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ビタミンCが脳に届く機序を確認~東京大学の研究グループ~


2022年1月14日、東京大学医学部・鈴木洋史教授らの研究グループがビタミンCを血液中から脳に届ける膜輸送体を発見し発表しました。

これまでわからなかったビタミンCの血液中から脳への移行にかかわる分子機構を明らかにしたもので、ビタミンCが脳機能に与える影響のさらなる解明につながる可能性があります。研究成果をまとめた論文は、米国の科学雑誌『iScience』に14日付(日本時間)で掲載されました。

研究グループは発見した膜輸送体を「ビタミンC排出タンパク質(VECP)」と名付けています。
これまで実体が謎に包まれていた『細胞内から細胞外への輸送を担う排出型のビタミンC輸送体』を初めて見出すことに成功、生物学的にも重要な発見だとしています。

ビタミンCは、さまざまな生理活性を持つことで知られています。ヒトは、体内でビタミンCを作ることができないため、食事やサプリメントなど食べものを通じて体内にとり入れています。
ただ、研究グループによると、からだの隅々にビタミンCを行き渡らせる仕組みの全容はいまだに明らかになっていないとのことです。
とりわけ脳は、ビタミンCを多く含む臓器である一方で、バリア組織を形成する細胞によって血液と隔てられています。そのため、血液から細胞内に取り込んだビタミンCを脳側へ排出する分子機構や分子実体が存在するはずでしたが長年謎とされてきました。

ビタミンC輸送体については取り込み型しか確認されていませんでしたが、研究グループは 培養細胞などを用いた実験を行い、膜輸送体の1つであるSLC2A12トランスポーターが血液から脳へのビタミンC供給に重要な役割を果たすことを見出しました。

研究グループは、今回の研究結果について、「細胞内から細胞外への輸送を担う排出型輸送体を世界で初めて同定したものでもあり、生理学の発展にも貢献する重要な成果」としています。
また、この成果を糸口として、「脳におけるビタミンCの重要性の包括的な理解が進むことで、生理学のみならず、栄養学や神経科学分野のさらなる発展にもつながることが期待される」としています。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子


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