女性の健康支援のデジタル化が進む中、医師などの専門職にオンラインで相談できるサービスが広がっていますが、その有用性はどのように評価できるのでしょうか?
妊娠中・産後の女性を対象とした研究では、オンライン健康医療相談サービスの利用が産後うつリスクの低下につながる可能性が示されました。ターゲットや訴求が限定されたものではありますが、オンライン相談の価値を考える上で参考になる研究です。
東京大学の荒川裕貴氏らの研究グループは、妊娠中・産後の女性が医師などの専門職に相談できる民間のオンラインサービスが、産後うつの予防に有効である可能性を明らかにしました。研究成果は、国際医学誌『BMC Medicine』に2023年6月に掲載されています。
産後うつは、母子の健康に影響を及ぼす重要な課題であることが知られている一方で、妊娠中や産後の女性は、自身の体調や育児のため移動が難しいことや、時間的制約、相談への心理的ハードルなどから、必要な支援を受けにくいことが指摘されていました。そこで研究グループは、オンラインで産婦人科医や小児科医、助産師などに相談できる環境が産後うつ予防につながる可能性を検証しました。
研究は、横浜市在住の妊婦734人を対象に実施。オンライン健康医療相談サービスを無料で利用できる「介入群」と、サービスを提供しない「対照群」にランダムに振り分け、介入群のサービスの利用状況の確認や、両者の産後の抑うつ症状の比較を行いました。介入群の女性は、妊娠中から産後まで、必要なタイミングで専門家へ相談できる環境が提供されています。

その結果、介入群の女性のうち7割が、サービスを通じて1回以上相談をしました。相談回数は0〜40回までで、中央値は1回、平均は2.8回です。相談内容は、腹部の症状、胎児、薬、授乳、子どもの皮膚の発疹、COVID-19などの感染症関連の懸念など多岐に渡り、メンタルヘルスの相談割合は小さかった傾向が見られました。
産後3カ月時点における産後うつ高リスク者の割合は、介入群で約15%、対照群で約22%となり、介入群のリスクは対照群の約3分の2であることが明らかになりました。この傾向は、収入や学歴などの社会経済背景によらず認められました。また、介入群では、対照群と比べて自己効力感が高く、孤独感が低いことに加え、医療へのアクセス障壁を感じる程度が少ないことも確認されています。
成果を踏まえ研究グループは、「オンライン健康医療相談サービスは、自宅から好きなタイミングで専門職に相談でき、個別サポートを受けられる点が、産後うつリスクの低下につながった可能性があります」とコメント。今後については、「産前産後の女性に限らず、健康やメンタルヘルスに悩む人々が、支援へのアクセス障壁をテクノロジーによって取り除くことで、メンタルヘルスの改善につながる可能性がある」としています。

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル
