矢野経済研究所が感覚センシング(触覚、味覚、嗅覚)の世界市場の調査結果を公表しました。
感覚センシング世界市場を牽引しているのは、ハプティクス(触覚・力覚・感圧)領域です。これは「センサ(感じる仕組み)」や「アクチュエータ(伝える仕組み)」などのリアルな感触を生み出す技術によるデバイス(機器)を中心としており、特に、スマートフォン向け振動アクチュエータを筆頭に、車載用や医療、FA(Factory Automation)・協働ロボットへの搭載が本格化しています。2025年にはロボット向けハプティクス分野が大きく成長しており、特に人手不足が深刻な建設や製造、介護現場での自動化、遠隔操作を支える中核技術として社会実装が進んでいます。
一方、味覚センサや嗅覚(におい)センサは、感覚センシング(センサ)世界市場全体における構成比は僅かですが、独自の進化を遂げています。味覚センサは食品・飲料分野を中心に、職人の技術伝承や「食のデータ化」のニーズを捉えて普及しています。食品業界や外食業界において、味の共有(引継ぎ、伝承)は徹底したレシピ管理やマニュアル化された調理方法が採られる場合は問題ないものの、概して職人技術は暗黙知である場合が多いことから、味覚センサによるデータ化を行うことで味の共有を実現していくことが求められています。
嗅覚センサは成分分析の難しさや収益性の課題を抱えつつも、介護・医療や生活環境分野で実用的な活用事例が出てきています。介護分野ではベッドに敷くだけで排泄のにおいを検知できるにおいセンサを活用したアプリケーションが製品化されており、介護の効率化などの利便性を生んでいます。また、生活環境分野では、駅のトイレのにおいを識別できるにおいセンサにより、衛生状況を把握することで清掃作業の効率化につなげています。

味覚と嗅覚は近しい感覚であり、互いの高い親和性から、食品や化粧品、薬品などにおいて、複数組み合わせられた総合的な感覚を戦略的に刺激するような商品が多く上市されています。これら商品の開発は機械による評価や分析も行われるものの、人間による官能評価(Human Sensory Evaluation)が支えていることが多いです。しかも現在の味覚・嗅覚センサは人間の感覚を超えることは難しく、専門性や経験知から人間が行っていくことが最も高い経済合理性があります。
今後、専門人材の不足や技術伝承などの課題が深刻化することは明確であり、一部企業においては積極的にセンシング技術の研究・開発と共に、センシング技術を活用した商品開発が行われています。こうしたなか、触覚・味覚・嗅覚におけるセンシング技術が今後更に進展し、実用化されていくとみられることから、2035年の感覚センシング世界市場規模(触覚、味覚、嗅覚)はメーカー出荷金額ベースで、3,180億円に成長すると予測されます。

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル