業界ニュース

健康分野での活用にも期待される「においセンシング市場」の今後

香り

矢野経済研究所は、2026年の「においセンシング市場」を調査し、市場規模、製品・開発・技術・市場・プレーヤーの動向について明らかにしました。センシングとはセンサー(探知機)を用いて温度や光、圧力、音などの物理量や科学的な情報を探知・計測して、デジタルデータ数値に変換して可視化・活用する技術です。

現在のにおい関連の課題は、においの強弱を測定し、業務フローの中で改善をすることで対応しています。識別することによる解決方法の方が効率的だとしても、それを実現する装置・機器には費用対効果が合わないことが多いです。そのため、においセンシング市場は、世界でも限られたプレーヤーしか事業化できていません。
そもそもにおいのセンシングが難しいことが市場拡大のハードルになっていますが、主な要因として以下の3点が挙げられます。

1 においの原臭が存在しない
2 測定濃度の幅が広い
3 人間の鼻に到底届く性能にない

また、においのセンシングにおいて、最適なセンシング方式が確定していません。各種特徴のあるセンシング方式は存在するものの、得意・不得意があります。さらに、においセンシングに対する支払い意欲が低いことも課題としてあります。人間の嗅覚で代替できるとの認識が根強く、においセンサを購入しても即座に活用できないケースが多いため、メーカーによる伴走支援が必要となり、導入・運用に手間がかかることが多いわけです。
こうしたことから、においセンシングの世界市場規模は2026年に24億3,592万円と見込んでいます。
尚、においセンシングの市場は、においセンサ(最終アプリケーション)とセンサ素子(内蔵されるデバイス)、得たデータを解析、表示などするためのソフトウェア、また、これらの一部またはすべてと人的リソース、ノウハウなどを活用したコンサルティングにて構成されます。

グラフ

<健康分野での活用例>
病の中には独特なにおいを発生させる病もあり、嗅覚センサによって病の早期発見が可能な時代が到来しつつあります。
大学事例ですが、呼気からがん診断が可能になる技術を開発。嗅覚センサであるMSSと機械学習を組み合わせて、手術前後の肺がん患者の呼気を分析し、がんの有無を予測する機械学習モデルを構築しました。
今後は各種ガス分析装置を用いた実験と組み合わせ、肺がんの存在を占める分子の特定を行うだけではなく、様々ながんに対応したスクリーニング方法として技術開発を進めていきたいとしています。

研究所の事例ですが、ガスセンサ素子の開発に加えて、複数のセンサを搭載したセンサアレイおよびデータ解析技術を開発し、従来技術では困難であった極低濃度アセトンの検知等を実現しました。糖尿病患者は呼気や皮膚ガス中のアセトンが高い特徴を持つため、実用化が進むことで、早期での治療を開始することが可能となります。
まだまだ課題を残している「においセンシング市場」ですが、健康分野においても今後のさらなる技術開発の進展により健康寿命の延伸へ寄与していくものと思われます。

執筆
代田 多喜子

健康ジャーナルライター

ホリスティック・ ジャーナル

編集長 代田 多喜子

Related articles