海藻を食べる頻度と腸内細菌の関係が明らかに
海藻は、日本人の食生活に古くから親しまれてきた身近な食材です。近年、食生活と腸内細菌叢との関係についてさまざまな研究が進められる中、海藻の総合メーカーであるカネリョウ海藻が日常的な海藻の摂取頻度と腸内細菌属との間にどのような関係があるのかに着目しました。そこで国内最大級の腸内フローラ検査サービス会社であるサイキンソーが保有する腸内細菌叢と生活習慣および食品摂取頻度に関するビッグデータを活用し、海藻摂取頻度と関連する腸内細菌属を明らかにすることを目的に、横断的観察研究を共同で実施し、その結果を2026年9月11 日(金)~13日(日)に開催された「第73回 日本栄養改善学会学術総会」にて発表しました。
本研究では腸内細菌叢や生活習慣、食品摂取頻度に関するビッグデータから性別、年齢、海藻摂取頻度で層別化した1,000人のデータを抽出しました。対象者を普段海藻を食べる頻度によって「週1回未満」「週1~3回」「週4~6 回」「毎日」の 4グループに分類し、海藻の摂取頻度と腸内細菌属との関連を比較・解析しました。
主な評価項目として、
① 腸内細菌属との関連
主要な腸内細菌属について海藻摂取頻度との関連を以下の2つの観点から調べました。
・存在比:腸内にその菌がどの程度存在しているか
・保有者割合:その菌を持っている人がどの程度いるか
※対象としたのは、1,000 人のうち 10%以上が保有している主要な菌属。
② 排便や生活習慣病との関連
腸内細菌に加えて、海藻の摂取頻度と「排便頻度」「排便形状」「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」との関連についても解析しました。なお、解析にあたっては、海藻以外の要因による影響も考慮するため、年齢、性別、BMI のほか、野菜、果物、肉類、魚介類、乳製品、大豆食品など、海藻以外の食材の摂取頻度を考慮した統計解析を行いました。
①海藻をよく食べる人ほど、腸内細菌属に幅広い変化
解析の結果、海藻の摂取頻度が高い人ほど、7種類の腸内細菌で「存在比(腸内にどれだけ存在するか)」が有意に高いことが分かりました(図1)。

図1
その代表が、次で紹介する酪酸産生能のある菌属である「Butyricicoccus」です。また、5種類の腸内細菌では「保有者割合(その菌を持っている人の割合)」も有意に高いことが確認されました(図2)。

図2
一方、タンパク質やアミノ酸、脂質の代謝物を利用する菌属である Peptococcusは逆に、海藻の摂取頻度が高い人ほど、図1の存在比で示すように、存在比が低くなるという結果でした。こうした結果から、日常的な海藻の摂取頻度は、日本人の腸内細菌属に幅広い影響を与えていることが示されました。
②海藻摂取頻度と酪酸産生能のある菌属「Butyricicoccus」に有意な正の関連
前述①で挙げた菌の中でも特に注目されるのが、酪酸をつくる能力を有する菌属の一種であるButyricicoccus です。海藻を食べる頻度が高い人ほど腸内でのButyricicoccus の存在比、そして Butyricicoccus を持っている人の割合の両方が、統計学的に有意に高くなっていました(存在比:p=0.012、保有者割合:p=0.005)。
前述①と②の結果を合わせると、海藻を食べる頻度と酪酸をつくる能力のある腸内細菌属との間には特に強い関連があると考えられます。
③女性は、海藻をよく食べる人ほど便秘傾向が少ない
海藻の摂取頻度と排便頻度の関係を調べたところ、全体では、海藻をよく食べる人ほど排便頻度が高くなる傾向が見られました(p=0.086)。特に女性だけで見ると、海藻をよく食べる人ほど、排便頻度が少ない人(=便秘傾向にある人)の割合が明確に少ないという結果になりました(p=0.034)。この便通への影響の大きさは、ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂る頻度による影響とほぼ同程度でした。(図3)

図3
腸内細菌の中には、食物繊維などを分解して「短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸など)」を産生する菌が存在し、中でも酪酸は腸管のバリア機能の維持や便通の調整に関与することが報告されています。海藻には食物繊維をはじめとする栄養素が豊富に含まれる一方、海藻の摂取頻度と腸内細菌属との関連を網羅的に検証した研究はこれまでほとんど例がありませんでした。
今回の共同研究により、海藻の摂取頻度と腸内細菌属との間に関連があることがわかりました。特に海藻の摂取頻度は「Butyricicoccus」をはじめとする酪酸産生能のある菌属の存在比と有意な正の相関が認められ、排便頻度についても増加傾向が示されました。

健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル