「美容師免許が必要」とする行政解釈にJHCIが是正求める
一般社団法人全国ヘルスケアサービス産業協会(JHCI)は2026年7月15日、東京都内で「JHCI政策フォーラム2026~職域を守り、未来をつくる~」を開催した。国会議員や法律の専門家、業界団体、エステティック事業者ら約200人が参加し、フェイシャルエステティックを巡る美容師法の解釈と、現場で起きている混乱について議論した。

現在、業界で問題視されているのが、自治体や保健所のホームページに掲載された「フェイシャル施術には美容師免許が必要」と受け取れる記載だ。
JHCIによると、渋谷区、千代田区、江東区、中央区、目黒区、さいたま市、鳥取県米子市など、複数の自治体で同様の表現が確認されている。知名度の高い自治体の記載が他地域に転用され、同様の解釈が全国へ広がることも懸念されている。
影響はすでに現場に及んでいる。新規開業を目指す事業者が金融機関から融資を受けにくくなったケースや、長年営業してきたサロンが行政指導を受けた事例が報告された。SNSでは「フェイシャルエステは違法なのか」と不安が広がり、本来は必要ない可能性があるにもかかわらず、美容師免許の取得を検討するエステティシャンも増えているという。
都内でフェイシャルサロン12店舗を運営する事業者からは、「このままでは営業そのものが成り立たなくなる」と切実な声が上がった。
混乱の背景には、厚生労働省が過去に示した通達の解釈の違いがある。
1967年の通達では「全身美容は美容師法に該当しない」とされている。この文言を反対に読めば、顔だけに行う施術は美容師法の対象になるとも解釈できる。一方、1980年の通達では、簡易なマッサージや皮膚の汚れを落とす程度の行為は、美容師法の対象外であることが示されている。
JHCIの顧問弁護士は、多くの保健所が古い通達のみを参照し、その後に示された通達を十分に確認していない可能性を指摘した。さらに2008年には、光脱毛は美容師法に該当しないとする通達も出されており、エステティックの業務範囲に関する行政の整理が一貫していない現状が浮かび上がった。
海外では、髪を扱う美容師と、肌や身体のケアを行うエステティシャンの資格や職域を分けている国が多い。フォーラムではフランス、イタリア、韓国、米国などの制度が紹介され、「フェイシャル施術に美容師免許を求める考え方は、世界標準とはいえない」との意見も出された。
日本のエステティック業には、現在も業法や国家免許制度がない。2002年には日本標準産業分類で美容業とは別の独立した産業に位置づけられたものの、法的な基盤がないため、補助制度の対象になりにくく、金融機関からの評価も得にくいという課題を抱えてきた。
一方、保健所側にも、明確な基準がないまま判断を求められる事情がある。専門知識を持つ職員が不足する自治体では、判断に迷う施術を安全側に寄せ、美容師法の対象として指導する傾向があるという。
フォーラムでは、直ちに新たな法律を整備するのではなく、まず全国で共通して使用できるガイドラインを示すことが現実的との提案が出された。
JHCIは、自治体や保健所のホームページにある誤解を招く表現の是正、美容師法の解釈の明確化、地域による行政判断の差の解消、準国家資格や認定資格制度の創設などを盛り込んだ政策提言書を作成。健康美容産業振興議員連盟の野田聖子会長と宮路拓馬事務局長に手交した。
今後は厚生労働省、経済産業省、業界団体などが参加するワーキンググループの設置を進め、代表的な施術ごとに法令上の扱いを整理していく方針だ。
エステティック産業の生産波及額は約4300億円、従事者数は15万~20万人とされる。利用者が安心して施術を受け、事業者が安心して働き続けるためには、業界の自主基準や教育体制の整備とともに、行政による明確で統一されたルールづくりが求められている。


健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル
