東京農工大学の跡見綾氏らの研究グループは、仰向けで行う短時間(10分)の2週間の運動プログラムによって、立位でのバランス能力や敏捷性(びんしょうせい)が向上する可能性を明らかにし、その成果が2026年4月、国際学術誌『PLOS ONE』に掲載されました。
バランス能力や敏捷性を高めるには、運動が効果的とされています。しかし、従来のトレーニングは立位で行うものや負荷の高いものが多く、高齢者やリハビリテーションの現場などでは取り組みにくいという課題がありました。そのため、安全かつ手軽に実施できる新たな運動プログラムの開発が求められていました。
そこで研究グループは、仰向けの姿勢で行う約10分間の運動プログラムを開発。プログラムは、腹部を指で軽く押しながら体幹の筋肉を収縮させる運動や、骨盤を後傾させながらブリッジ動作を行う運動、足指や下肢の協調的な動きを促す運動などで構成され、体幹の安定性と下肢の連動性を高めることを目的としています。研究では、健康な成人39人を対象に2つの実験を実施。エクササイズの効果を評価しました。
その結果、柔軟性や敏捷性、静的立位バランス能力の向上が確認されました。また、反復横跳び時の頭部や体幹の動きが効率化し、姿勢制御の改善が示唆されました。一方、握力や跳躍能力などの最大筋力指標に有意な変化はみられませんでした。
これらの結果から、仰向けで行うエクササイズであっても、立位や抗重力位(重力に対抗して姿勢を維持している状態)における敏捷性や姿勢制御能力の向上につながる可能性が示されました。特に、体幹の安定性を保ちながら下肢との協調運動を高めることが、より効率的な運動制御に寄与した可能性があるとしています。
成果を踏まえ研究グループは、「安全かつ簡便に実施できるトレーニングとして、高齢者やリハビリテーション分野への応用が期待される」とコメント。今後については、「本研究で確認された効果の持続性や長期的な介入効果について検討を進めるとともに、高齢者や運動機能が低下した人への適用可能性についても検証を行っていく」としています。


健康ジャーナルライター
ホリスティック・ ジャーナル